2012/08/21

Pukkelpop 奮闘編


序章。


 目の前に現れたのは、コカコーラやベルギー国鉄やラジオ局などの広告の数々。エントランスにはチケット交換の列が5列くらいあるがどれも長蛇の列。客層は白人の若者がほとんどで男の半分くらいがなぜか上半身裸でスキンヘッドだ。必ず右手にベルギーの国民的ビールJupilerがあることも忘れてはいけない。その長蛇の列に並ぼうとするも、キャンプサイト入り口でもチケットをリストバンドに交換できるという。ならばキャンプサイトまで歩いて行くかという考えになった。チケットは日本からプリントアウトしてきたもので、丁寧にキャンプサイトの位置まで書いてある。

どれどれ、僕はキャンプサイトBだ。

ACDBの順で並んでいて僕のBが一番遠く、地図上で見てもかなり離れていてバスも出ているという。なんだバスがあるなら最初に言ってくれよと安堵な気持ちになるも、バス停前はバーゲンセールのような状態になっていた。僕の周りにも何人かBのチケットを持っている人がいて、こりゃだめだなと言わんばかりに徒歩を決意していたようだ。僕も同じく徒歩を決意した。




歩いても歩いてもCにさえ辿り着かない。一体どうなってるんだ、30分くらい歩いただろうか、やっとCが見えてきた。BはCを超えた先にある。キャンプサイトCの大きさに愕然としながら歩き続ける。バックパックに壊れたカメラ、1Lの水。今すぐすべて捨ててどこかで寝っ転がりたかった。重い、暑い、肩も痛い。心が折れてしまいそうだった。何で僕は一人でこんな事してるんだろう、そんな事まで考えてしまった。


 しばらくすると、ついにBが見えてきた、うれしいというよりもほっとした方が強かった。しかし、すぐまた長い列が。

長い列に並んでいると、放送が流れてきた。フランス語とオランダ語で意味が分からない。周りの客は「オイ!」と落胆と怒りが混ざったリアクションだ。一体何が起きたのか、近くの係員に英語で訪ねると、驚愕の事実が。

「このキャンプサイトは一杯になってしまいました。そのチケットでAに行ってください、バスはここから出てますので」


えええ?


また戻れというのかこいつは。そりゃ無いよと言ってしまった。しかしAはゲートのすぐ目の前で実は会場とのアクセスがすごくいいのだ。まあ棚から牡丹餅だと思うか。そしてすぐにバス停へ行くと。。。



衝撃的な光景だった。



数百人の人が押し合い圧し合い、わずかなバスの隙間へ我先にと争奪戦になっている。しかも並んでいるならまだしも、来るバスを取り囲みバスに対して半円になるように並んでいた。ここまで来てもう歩いては戻りたくない。ここに並ぶしかない。そう決意したのち圧死しそうなくらい押され体力も限界に近づこうとしていた。東洋人や黒人が一切いないせいかアウェー感がすごい。どこかで小競り合いがあったようだ。怒鳴り声が聞こえる。そしてバスが10台目くらいでやっと中に入れた。

さすがに疲れすぐに眠っていまいそうだった。バスはなぜか遠回りをして20分くらいかけ会場前に着いた。やっとキャンプサイトに入れる、誰もがそう思ったに違いない、しかし修羅場はここからだった。

またしてもBからあふれてきた人たちでAの前には数百人の人間が待っている。しかし、20分、30分経っても何も変化が無い。その間Aのチケットを元々持っていた人はすらすら入って行く、横目で我々は指をくわえていた。そして、待ちきれない上半身裸の若者が缶やペットボトルを投げ始める。指笛ブーイングも一斉に始まった。ヤバいなと思った、次の瞬間。関係者がおそらく

「待ちなさい、暴れると中に入れさせないぞ」

という感じの事をおそらく言った。さらに10分くらいたったであろうか、若者たちの一部が興奮し発煙筒を何処からか持ってきて点火してしまった。缶やペットボトルやゴミも投げられる。ついにこれはまずい、なんかのデモに参加しているのではないか、だとしたらなんのデモだろう。まあそんなことはどうでもいい、とにかくヘタしたら怪我するかもしれない。だが若者たちは近くにいる馬に乗った警察官によって取り押さえられ、その場が収拾された。その直後にようやく奥の方に案内され、最寄りの駅に着いてから実に4時間後にテントが建てられたのだった。




もう寝て明日帰ろうかな。
う思ってしまったのも過言ではない。




つづく