2019/12/27

わたりベストアルバム2019




約30年前の僕。
2019年のアルバムを今年も30枚選びました。



今年ももうこんな季節かと思ってしまう今日この頃ですが、ホットドッグ事業が今月に入り大きく前進したこともあってホッとしているのでアルバム選びはこの1ヶ月で追い込みをかけました。昨年のBeach Houseの”7”ほど圧倒的な印象を残したアルバムはありませんが、どれも印象深くて知人の紹介や批評サイトAOTYやBandcampなどのお陰で多ジャンルに及んだことは大きいと思います。

まあ、そんな感じでゆるく30位から紹介したいと思います。。






#30. SASAMI-SASAMI 


ロサンゼルスを拠点にしているSASAMIのデビューアルバム。Cherry Glazerrというバンドのメンバーだったそうだ。ソニックユースを思い出させるようなギターの応酬は聞き応えあり。しっとりと歌うDevendra Banhart参加の”Free”がおすすめ






#29. Sharon Van Etten - Remind Me Tomorrow



2014年 “Are We There”から5年という長い休暇から戻ってきて、1曲めのイントロを除けばまるで別人のようなスタイルになっている。以前はもっと内向的で失恋して暗い様子さえあったのだが、何か吹っ切れたように力強い歌い方に変わり髪もパーマをかけてワイルドな印象になった。

未だに音楽性の変化が受け入れられないところがあるものの、楽曲は素晴らしく彼女の良さは十二分に伝わってくる。

もう二度とないかもしれない来日公演をもう一度体験したい。







#28.KOKOROKO - KOKOROKO



イギリスのアフロジャズのKOKOROKOのデビューEP。4曲だけでも事足りるくらい多くを語らなくてもこの雰囲気に合わせられる。BGMとしてはとても上出来。アップテンポの”Ti-de”は特に好きでインストであることでグルーブ感をより感じる。





#27. Tropical Fuck Storm - Braindrops



メルボルン発のサイケバンド。前半からひねくれたメロディラインにドロドロ感漂うメインの男性ボーカル。女性のコーラスの方は割とはっきりした声なので少し中和してる感じがまたいい。ギターの自由に遊んでる感じはかつての70年代UKサイケ風。
なかなか良かったです。








#26. Grace Cummings - Refuge Cove



こちらもオーストラリア、メルボルン出身のフォークシンガーのGrace Cummingsのデビューアルバム。太い芯のあるボーカルにアコースティックギターの弾き語りがほとんど。最後の曲はピアノだけかな。
個人的に好きなのは”Lullaby for Buddy”












#25. Bat For Lashes - Lost Girls



Bat For Lashes 久々の新譜。今作はナターシャのThe Cureがいかに好きかというのがわかるほどキュアーの影響を受けているようなサウンドだ。最近は初期に比べ大人びた余裕の感じる楽曲が多くわざとらしさもない。そのことが聞き手を落ち着かせる効果があるようだ。

かつて僕がイギリスで見たBat For Lashesのライブでサインをもらったことが懐かしいが、もう10年も前のことだと思うと、年月の流れるスピードがいかに早いかと感じる今日この頃。









#24. King Gizzard & The Lizard Wizard - Infest The Rats’ Nest



デビュー9年の経歴で15枚のアルバムを既に発表しているというとんでもないハードワークな彼らはメルボルン出身のKing Gizzard & The Lizard Wizard
フジロックのホワイトステージでそのライブを見てすぐに虜に。アルバムは今までのサイケロックとは大幅に路線変更してスラッシュメタルという僕自身あまり聞かなかった分野だが、これがまた抜けるほど気持ちが良くついアルバムを通して聞いてしまう。









#23. SPAZA - SPAZA



南アフリカはヨハネスブルクの定まったバンドメンバーを持たない集団、SPAZA。
アフロファンク、ジャズ、アフリカ音楽を実験的にサイケデリックに融合させて独特の世界観を作り出している。





#22. Brittany Howard - Jamie



Alabama Shakesのリードボーカル、ギタリストであるBrittany Howardのソロ作品。バンド自体はそこまで僕は興味がなかったので深く聴いてなかった。でもこれは試し聞きした瞬間からもう一度聞くリストにずっと入っていて何回か聴き直した。

元のベースはアラバマシェイクスのようなソウルフルなロックだが、音の作り方もさることながら音場へのこだわりが強いようで、どこかのベニューで聴いているような感覚になる。
どれも良いが、お気に入りは”13th Century Metal”










#21. Big Thief - U.F.O.F.



2017年”Capacity”で彼らの存在を知り好きになった。今年はキャリア3枚目更に4枚目のリリースもするほど精力的な年となった。U.F.O.F./ Two Hands共に内容は良いがU.F.O.F. の方が個人的に受け入れやすく、Two Handsはどうしてもマニアックな路線で感情的だ。そしてなによりも“Strange”の良さといったら。。これはキャリアの中でも名曲だと思う。












#20. Deerhunter - Why Hasn’t Everything Already Disappeared?



今年の来日公演も懐かしいDeerhunter。渋谷でライブを見て台湾料理の老舗”麗郷”という定番の行動はこれからも続けていきたい。
余談はともかく終始Deerhunter節炸裂、コンパクトで起承転結をしっかり貫き、あっという間にストーリーは終わっているかのような疾走感。久々の大当たりです。








#19. Mac DeMarco - Here Comes the Cowboy



カウボーイここに来たる。タイトル曲はもろカントリーフォークで始まり、その後は音数の少ない静かな構成が多い。なんとも落ち着くアルバムだし、ここまでMac DeMarcoを好きになったのも始めてだ。いかにもロードムービー的なローテンポの心地よさがいつまでも続く。。












#18. The National - I Am Easy to Find



26分にわたる映像作品”I Am Easy To Find”が公開され、The Nationalの8作目はドラマティックで実験的なコンセプトアルバムだ。前作”Sleep Well Beast”は個人的に最高傑作だと思っている。その影響のせいか、今回のコンセプトを大いに歓迎できる気分が結局のところできないまま年末を迎えてしまった。アルバム通して聞いたのも数回のみで、ナショナルを聞き始めてからこんな現象は初めてだ。久しぶりに盟友Sharon Van Ettenも登場した明るみにみちた”Rylan”だって、Mattの奥さんCarinが書いた”Hey Rosey”の美しさ、ブルックリンユースコーラス隊の美しいコーラスなどなど、魅了される点は今までより確実に多い。数多くのゲストボーカルの登場により今までのThe Nationalスタンダードは大きな転換ポイントにいるような感じさえする。

一つ一つの曲の完成度は前作を上回るのも納得できるし素晴らしい。だけど、僕の元から離れてしまった感が否めない。






#17. Altın Gün - Gece



トルコ系のオランダ人の6人からなるバンド。サイケデリックにトルコのAnatolian Psychedelic(アナトリアロック、Turkish Folkとも,70年代に人気を博したジャンル。コンピレーションなどを聞いてみるとインドや中東民謡に近い)
去年ヒットしたKhruanbingに近く、来年はAltin Gunが席巻するか見ものだ。

インタビューを見る限り各曲にはオリジナルバージョンが昔あったと言う話があるので、カバーの可能性もある。このような地域的だったものが大きい市場にも現れるようになったのは紛れもなくSNSやストリーミングサービス、そして音楽を紹介する媒体が成長したことによる結果だと思う。






#16. CHAI - PUNK



愛知生まれの4人の女の子バンド。個人的には日本で最も衝撃的なデビューを飾ったに違いない。ライブでの可愛らしい演出もさることながら、演奏の技術はかなり高レベル(特に好きなのはリズム隊) 曲もキャッチーだがゴリゴリの邦楽っぽさが薄まっているので聴きやすい。

ちょっと古臭いバラエティ番組風の衣装といいルックスでも音でも楽しませてくれる。こういう日本人にしかできないようなバンドが出てくるとどうしても応援してしまいます。今年はおとぼけビーバーも海外で流行ったけど、ちょっと僕にはまだ分からないかな。。
大ブレイク、そしてPitchfork 年間46位おめでとう!







#15. Flume - Hi This Is Flume (Mixtape)



アルバムでもEPでもなくミックステープという扱いがなんとも良い判断なFlumeの新作。2016年のSkinを聴いてみたがあまり受け付けられないジャンルであったがこのミックステープは秀逸。なんといっても攻撃的でリアクションの大きい断片的なマッシュアップの数々で聴き手を黙らすミックス。ラップが重きにあるのでヒップホップとしても優秀な作品であると思う。






#14. Sessa - Grandeza



ブラジルはサンパウロのサイケフォーク(ジャンルで割り切るのは難しい)
サンバの面影もありフォークの要素もあり、そしてサイケデリックな空気感と聞いた瞬間から好きになってしまったこのバンド。あまり詳しくはないので多く思い入れは語れないがベース、ボーカルオンリーとギター弾き語り(後半サックス)のアレンジ、浮遊感はとても普通とはいえない。







#13. Andy Stott - It Should Be Us



2016年の”Too Many Voices”以来のリリース。相変わらずというかまたしても地を這うようなパーカッションや破滅的なドラムマシンのサウンドはやみつきになるのはいうまでもない。スローテンポの数々のビートはまさに化学工場のオフィシャルBGMとして使用することをお勧めしたい。






#12. Lana Del Rey - Norman Fucking Rockwell!





いよいよ僕もこのLana Del Reyを評価する時が来た。この畳み掛けるような1時間8分の世界は確実に似て非なるものであり聴き手を虜にするだろう。すごく良い内容だけども個人的にはどっぷりと浸れる器がないのが残念だ。

”Venice Bitch”は今年のベストシングルといってもいいほど素晴らしい曲だ。







#11. Metronomy - Metronomy Forever



ライブの記憶が今でも蘇るほど素晴らしかった11月単独公演。その日から改めてアルバムを聴くと良さが倍増するというライブロス効果も加わり久々のランクイン。ここ最近メディアではすっかりスルーな扱いとなってしまったがかつてのアンセムを超越するほどの完成度、創造性が豊かになった”Metronomy Forever”はこれからも聴きつづけるだろう。

”The Light””Sex Emoji” “Upset My Girlfriend”などしっかり聞けば素晴らしい曲にも出会える。







#10. El Wali - Tiris



西サハラとはサハラアラブ共和国、モロッコと領土争いを半世紀にわたって争っている地域である。このバンドは90年代に西サハラや北アフリカのみならずヨーロッパでも人気を博したという。

彼らサハラウィ(遊牧民)の伝統的スタイルと西洋音楽が混ざり合ったものでシンセとドラムマシンの変則的なリズムやアラビア語の男女のボーカルのアクセントがまた楽曲の一部を構成している。

このアルバムは1994年にベルギーで録音されたものだが、わずかな枚数をリリースした後は行方がほとんど分からなくなってしまっていたそうだが、今回北アフリカ各国、ヨーロッパでカセットやCDを探し出しついにアルバムを再販することで僕も知ることができた。

本当は今年にリリースしたものだけを選ぶようにしてましたがこのような貴重な音源でしかもそれが素晴らしい内容ともあってランクインに選んだ。







#9. Jessica Pratt - Quiet Signs



ほとんどギターの弾き語りで、天井が高くてあまり人が寄り付かない廃墟みたいな場所のように音が響き渡る。彼女の甘い歌声はまるで感情をなくした少女のように寂しさがこもっているようだ。聞き流すと別世界に連れて行かれるようなスピリチュアルな感覚にも浸れる。是非ともこの美しい弾き語りを生で体験したいものだ。
 





#8. M83 - DSVII



フランスのバンドM83の新譜は驚きに満ちた異空間。

前作“Junk”は本国フランスでも26位になるなど商業的にもまずまず成功して、今作への期待は世界中のシンセポップファンが注目したであろう。が、蓋を開けてみればびっくり。

まるでいままでのドリームポップやシンセとは違いアンビエントなゲーム音楽のようなはっきり言って万人受けは難しい内容のものであった。
れがM83じゃなかったら誰も知らない作品になってしまってたのではと思うほどやや理解に苦しむ作品だ。

とはいうものの僕はこの手のちょいダサアンビエント並びにホームセンターBGMはもってのこいだ。実際アンビエント作品としては最高のできだと思う。心地よいピアノのゆったりとした流れは午後のまどろみにぴったりなBGMだし、中盤の”Lune de fiel”はプログレ色が強く静けさの多いこのアルバムに一石を投じるような激しいドラムが心地よい。

批評サイトはこぞって低評価でフランスのアルバムチャートも最高96位と世間様には全く受け入れられなかった様子だが僕は応援していますよ。








#7. Billie Eilish - WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?



今年もっとも大きく音楽界を沸かせ、わずか17歳にしてその個性と才能の豊かさと刺激は僕にも伝わってきた。かわいいとか美しいとかよりもグロテスクやダサいの良さを表現する勇気があって、かつそれを成功させている。

音でもそうだ、”xanny”は一聴すると音割れのような歪んだベースが度々あるがこれは決して音が悪いうんぬんではなく表現の一環である。現にレコード版でもクリアに歪んでいた。かと思えば”8”のようにウクレレにのせてゆったりとポップに歌ってみせる。僕は歌唱力に興味も重要度も低い方だが、この曲でああ歌が上手いというのはこういう人のことをいうのかと思うほど。

展開は激しく右往左往しジェットコースターさながら急降下して、物語が全て終わったことを聞き手が悟らされる”goodbye”でアルバムは終わりを迎える。

ドラマティックでアグレッシブで尖っていて挑戦的で普通じゃないがポップで、実の兄がプロデューサーということもこの大それた物を作り出せたのだろう。とにかく今年重要な作品だったしこれからもっとすごいものを作ってくれそうな予感もあるので今回はこのぐらいで。。。









#6. Ana Roxanne - ~~~



今まであまり感じたことのないくらい温かみのあるサウンド。ヘッドホンで聴きながら寝るとそのままベッドと一体化してしまうような感覚にこのアルバムの底知れぬ癒しのパワーを感じる。

休みの日に何をしたらいいか分からない時とか、少し落ち込んだ時とかいつも聞いてる音楽が飽きた時、そしてそれを全てリセットしたい時。このアルバムはたった27分間であなたのリセットボタンになってくれる。

このようなアンビエントは重宝したいです。









#5. Deradoorian - Disembodied Improvisations vol.1


もう1つ極上のアンビエント作品を。

元Dirty Projectors のメンバーだった Angel Deradoorian のおそらくBandcamp限定のソロEP作品。スピリチュアルなアンビエントだがシンセのリズムがある2〜3曲めなんかは個人的に毎回プレイリストに入れるほど好きだ。

自主制作でおそらくミキシングにもそこまで手を混んでない分手作り感があり音量もかなり抑えられている。そこがまたわずかにパワースポットのような神秘さを描いているのでは。

Dirtyprojectorsはともかく、前のソロ作品とも違う一面となっておりこの作品はコンセプトがまるで違う。
突然思い出したかのように歌い出すAngelに感動しつつも無言で唾を飲み込むほど静けさが重要なサウンドだ。








#4. The Chemical Brothers - No Geography





1995年のデビューから9作品目というダンス界の大御所ケミカルブラザーズの新作。
毎度個人的には完成度が高く好きになる曲も多いのでランクインはするが年間で4位にしたのは初めてだろう。



去る今年7月、フジロックの金曜日の大トリ。僕にとってもう3度目のフジロックのケミカルブラザーズということもあり、余裕ある態度で観ていた。気づきはじめたのは始まってから序盤の20分くらいか。

どう考えても他のバンドと音の良さが違う。生音とデジタルの違いではない、もうその場所を知り尽くしている者だけができる偉業なのだということを。そして何よりも彼らのライブパフォーマンスもいつもよりエネルギッシュなマッシュアップの数々で僕がはじめて2004年に観たものがはっきりと蘇りその感動がこだましたかのように全身に降りかかった。


僕は涙を止めることができなかった。それもふつうに感動してウルっと泣くようなものではない、子どもが駄々をこねて大声で泣くように。


あの時、今まで見た数々のライブの歴史の中でも最も感情的になった。それは紛れもなくこのアルバムによる影響もあるだろう。
1曲目から彼らの最も得意なブレイクビーツがここまでやるかと言わんばかりの仕上がり、ゲストボーカルのAuroraの妖しげな存在と”ゆるふわギャング”のラッパーNENEがこの曲の印象を決定づけている。日本語の歌詞も初めてだと思うがそれがまたカッコよくハマっている。

個人的にはなんといっても”Got To Keep On”のグルーヴ感は最高すぎました。ビデオもライブバージョンもPVも背景を黒幕に
統一している。ライブ版は全身ピンクの近未来的なモデルダンサーとピンクのぬいぐるみがこれまた踊る。この映像の素晴らしさはケミカルブラザーズのライブ映像でも最高峰だろう。
















#3. Thom Yorke - ANIMA




今年10月、Stereolabの再結成ツアーを見に行くだけの為にサンフランシスコに初めて行った。街は想像以上に魅力があり楽しい日々を毎晩のステレオラブのショーとともに過ごしていた。2日目にはちょうどその時Thom Yorkeが野外のステージで単独を行うとのことだったのでチケットを買っておいた。

殺伐とした雰囲気の地下鉄に乗り込みすっかり日も暮れたサンフランシスコ郊外にあるUC Berkeley Theatreの円形劇場の最上段からはサンフランシスコの夜景も演出の一つのように光り輝いていた。

ステージでは青のライティングにドライアイスのスモークがステージを包み込んでいた。

”Dawn Chorus”の時だ。あのANIMAのビデオを思い出す。あまり見ることのできないなんとも優しげなトムヨークと新しい彼のパートナーの仲睦まじい映像の表現。Moshi Mosh...

あのときは寒さの中でも感動のあまり涙目になってしまった。


あの会場の環境はこのアルバムに最も浸ることのできる最良の場といっても過言ではなかったと思う。
そのとき僕はそう思った。

RadioheadではできないThom Yorkeでしかできないもの、僕はようやくそれが受け入れられたと。このアルバムの淡白なリズムを聴きながら砧公園の森の中をランニングしたい。


















#2. Solange - When I Get Home




これは個人的な意見です。
ストリーミング配信に一石を投じるようなそんなアルバム。

ここ最近のSpotifyやApple Musicをはじめとするサービスの数々、僕もApple Musicの方を数年前からやっていて、Shazamもそうだがとてもバラエティが増えて音楽発掘隊にとってはドラゴンボールに例えるなら最高のドラゴンレーダーを手にすることになった。

しかし、あくまでも製作側というのはアルバムもしくは曲を作ってナンボの世界で最近流行しているプレイリストの1部を送り出すことではない。だからといってSolangeがこのアルバムを全部聴きなさいと言ってるようにも思えない。彼女がやりたかった表現がこのような世界観に至っただけなのかもしれない。

シングルのような尖った曲はなく、どれも感情が抑えられたコンテンポラリーダンスのように。

前作を遥かに圧倒して彼女のジャズ、ソウルの美しさは頂点を極める。










#1. Men I Trust - Oncle Jazz






•U•





カナダのケベック出身の3人組を2019年のベストアルバムに選ぶことにした。

Men I Trust、それを知ったのは知人によるライブの誘いからだった。
その事には心から感謝しなければならない、なぜなら意外にも僕のよく見ている情報でも彼らのことがあまり出てこなかったので、おそらくその誘いがなければ彼らを知らないまま年を越していたところだろう。

残念ながらその来日公演は延期となり来年の2月に振り替えられることになる。それは僕にとって”Oncle Jazz”にどっぷりと浸かる時間ができた事を意味していた。

結果的に浸かるもなにもその沼から抜け出せられない底なし沼だった。

バンドは3人だがライブでは5人編成らしい。どの曲も淡くまるで水中の中で流れているかのように音量も一つ一つの音も高い音が抑えられている。そのことがEmma(ボーカル)の
脱力感がありながら緊張感のある歌にマッチしてとんでもないグルーヴ感が湧き出ている。この事が曲がオーソドックスでシンプルなコードでも他と一線を画す要素か。
ヴェイパーウェイブからの要素もあるとの事だが、それには僕も納得でシンセやこもらせたミックスはそれに近い気がする。

優しい幕開けのイントロを終えるとふわりとしたバスドラとスネアが心地よい"Norton Commander"からスタートする。終始不協和音となってるシンセが見事な浮遊感をつくりだしアルバムの幕開けを切る。ビデオ必聴の”Tailwhip”はアップテンポながらも彼らの要素となる浮遊感漂うシンセやもこもこドラムはもはやレギュレーションになっている。

"Porcelain"では彼らなりのグランジアレンジからはじまり、後半にはこの上ない幸せ感を運んでくるようなエコーに包まれたアルペジオが印象深い。歌詞は基本的に恋に関することが多いがこの曲はポエムのように詩的なところも好きだ
"Morning
Red like wine
Got me trapped under
Venetian blinds"
(まるでワインみたいな 真っ赤な朝  ヴェネチアンブラインドの下 私を虜にした) *オフィシャル日本語訳より
日本語訳の”虜にした”という訳がセンスが光る。

ずいぶん長く書いてしまって恐縮ですがこのアルバムのもう1つすごいところは、もしあなたがドライブ中に合わせて聴く事ができるのならさらにこのアルバムの良さに気づくと思う。
この柔らかなサウンドが場所時間を問わずあなたがドライブしている風景をまるでビデオライブラリを見ているかのように映像化できるほど最高のBGMとなる。

他にも面白いところはたくさんあって、映像作品がDIYながら秀逸な作品ばかりだったり、カセットテープではさらに殻に篭るようなミックスだったり、何故か日本版のCDはトラックリストの曲順が全然違っていたり。
今年は完全に打ちのめされました。

CDのケースを開けると。。
“This album is mixed quietly.  Volume up! •U•”