2016/12/29

2016ベストアルバム #10~#1



ベスト10となりました。去年も同じようなことを言いましたが、今年のベスト10は非常に濃厚で選ぶのに苦労しました。


それではどうぞ。
















Super Low
WAREHOUSE
BAYONET RECORDS






今年大いに注目したのBayonet Recordsからもう一枚。ジョージアのアトランタ出身の若い5人組のWarehouseだ。まさか神取忍の息子さんじゃないですよね?と訊きたくなるほど似ているボーカルのElaine君。
そして彼のダミ声の癖の強いボーカルが特徴的でとてもファンキーだ。
バンドは80年代パンクを思わすスタイルで、同じジョージア出身のR.E.M.を思わずにはいられない。疾走感はまるで"Murmur"のそれに通ずるし、メロディはR.E.M.3rdの"玉手箱"の哀愁感を感じずにはいられない。
このダミ声とギターの感じ、とても渋いですよ。

まだまだ若いので、そっと彼らの才能の発揮を見守っておくことにしたいと思う。


















Junk
M83
MUTE




本国フランスよりイギリスやアメリカで流行っているシンセポップユニットM83の7枚目の新作"Junk"が9位。
彼らのことは前から認知はしていたが個人的にそこまでハマるようなことはなかった。今回も流すような感じで聴いたのだが、このドラマティックな展開と底知れぬムーディさ、たまに出てくるちょいダサなホームセンターBGM(#Moon Crystal)といい僕の心をすっかり掴んでいたのだ。"The Wizard"はこれまでのM83にはなかった新しいものだとかってに僕は思う、80年代のテクノポップを思い出す。
相応してタイトルのJunkという投げやりな感じのタイトルとジャケットの謎のキャラクターとなぜかハンバーガーとロゴのフォントの安っぽさは内容のドラマティックさとかけ離れているところも良い。











Everywhere at The End of Time
THE CARETAKER
History Always








調べ不足で恐縮だが、アメリカのネットライブラリーに保管されている無数の曲の中から著作権の無いものがダウンロードできるようになったそうだ。
おそらく1900~20年くらいの間とされ今から100年前に録音されたものをエフェクトやノイズを調整してループ状にしたものを作品としている、その多くの曲は作者や奏者が不明だったたりするもので、それだけでどことなくミステリー感が漂う。
彼がこの素晴らしい曲達の断片を作品にしたことによって現代とは全く違う空気感の音楽を楽しむことができる。
それは現代の曲にはない音楽という娯楽の楽しみ、感動というものを与えてくれるのだ。別に今の音楽が悪いと言うわけではなく種類が違うことを言いたい。

誰が作ったのか演奏しているのかわからない、ただ単調なピアノのメロディを聴くと、ふわっとセピア色をした西日がアンティークな家具を照らす部屋にいるような感覚に陥った。

このThe Caretaker、これから3年で同様の作品6枚をリリースする予定だと言う。しばらく彼が発掘し磨き上げたものが我々を再び感動させることだろう。
















Schmilco
WILCO
dBpm Records







個人的にシカゴの重鎮、Wilcoが前作Star Warsに継ぐ2年連続のリリース。

10枚目となる今回のアルバムは当サイト初ランクインということになったのは僕自身意外を通り越して怒りを覚えるほどだ。

まず、このアートワークが可愛すぎるのことだ。こんなに愛くるしくコメディでポップなジャケットは未だかつてあっただろうか?
そしてなぜ今の今までWilcoの良さに気づがなかったのだろう、きっかけは今年のフジロックだった。
そう10年連続で行っていたフジロックを3年連続で断念していたのだが、もう我慢の限界で来年こそは行くしかないと決めているのだが、それもこれもWilcoがとてつもなく良かったという声が相次いだためだ。

話はだいぶそれてしまったが、この空気感こそがWilcoであり彼ら以外にこの濃厚でエキセントリックで聴いてて何も心配しなくて良いロックというのは彼らくらいか、去年のベストサウンドオブシカゴがヨラテンゴ(ニュージャージーだけど)ならことしはウイルコでしょ。

















The Hope Six Demolition Project
PJ HARVEY
Vagrant Records







個人作としては9作目となる5年ぶり、PJ Harveyの新作だ。相変わらずコンセプトをしっかりとこしらえて自分の今伝えたいことをしっかりと伝えるというところがすごい。

それは昔から変わらない、しかし音楽の分野は若いころ彼女がやっていたパンクよりとはだいぶ変わってきている。

前作"Let England Shake"から個人的には大きな変化はないと考えている。5年経って変わったことはサックスが増え、さらにブラックミュージック寄りな曲が多くなったところか。
ポーリーの相変わらずのハスキーボイスも健在で5年待って安心する内容の傑作だ。

さて、来年2017年1月31日にいよいよ久しぶりの来日公演があるのだ。2004年のフジロック以来だという、2004年のフジロックといえば僕が初めて行った年でもある。19歳だった。
その時残念ながらポーリーの姿どころか存在すら知らなかったことは今となっては懐かしい。そんな日本では貴重なポーリーのライブを観れるのはすごく嬉しいし、アルバムごとにステージのコンセプトががらっとかわるので、そういう意味でも楽しみである。















IV
BADBADNOTGOOD
Innovative Reisure






突如として僕の目の前に現れた、カナダはトロントを拠点とするジャズ,フュージョンバンドBADBADNOTGOODだ。弾けるようなグルーブ感ととろけるようなしっとり感、そしてラップが混ざることにより一気にモダンな仕上な曲もある。シンセが終始ギンギンによく響き時折ハイパーチューンが鳴るあたりはセンスが良い。

なんといってもエキセントリックなサックスとクラリネットの青年の演奏はたまらないし畳み掛けるような高い技術のドラムはこれまでこんな素晴らしいジャズバンドをみたことがない。

この間ライブに行った時にそれは確信に変わった。あまりにも高いグルーブ感にボーカルがいないことを忘れてしまうほどのクオリティだった。

これから決して忘れることのできない重要なバンドの登場です。





















Day Breaks
NORAH JONES
BLUE NOTE






ノラジョーンズが"Little Broken Hearts"以来の4年ぶりに新譜をリリースした。
この作品は前作プロデュースしたデンジャーマウスを離れ、おそらくここまでセルフプロデュースに近づいたのは初めてなのではないでしょうか。一応3名の連名になっているが、カバー曲以外はノラ自身が中心に書いた曲であるようだ。

前作のバーや小さい箱に似合うジャズバンド風というのか、どちらかというとバンドサウンドが圧倒的に多く、それは僕にとって過去の作品を覆すほどの内容でありニュー・ノラジョーンズのはじまりを予感させたのは言うまでもない。

そして去る今年の秋、"Carry On"でノラは舞い戻って来た。初め聞いたとき、おや以前の大衆的ノラに戻ってしまったのかと少しさみしい思いをした。アルバムが出て、通して聞いてみると"それ"はすぐに吹き飛んでしまった。
これはただものではない、以前のノラにもどった?ふざけるなと一蹴してやりたい。
特にノラのソングライティングの能力が爆発し、それをまとうベースとドラムのリズム隊がもうこの上ないほど強力なムードを作り出している。
もし、ドラムがジョーイ氏(前作)だったら。いやそんなたらればはどうでもいいくらいもっとも彼女に惚れた秋だった。






























Wildflower
THE AVALANCHES
XL/EMI/Modular






いよいよ3位となりました。
第3位はあの伝説的なアルバム"Since I Left You"から16年という時を経て完成したアヴァランチーズの新作です。

"Wildflower"は彼らのハイセンスな選曲とタイミングによってとても心地よく身体に伝わってくる。
このアルバムはおそらく後半のThe Wozard Izの為のものなのアルバムなんじゃないか、もしくはそれまでの曲は、この曲までの壮大な振りなんじゃないかと勘ぐるほどこの曲への送り込みが全力で爆発的な開放感がある。
そういう意味ではすごくライブ感のある新作だと思う、一定のそこまで広くないジャンルに統一されているようだし前作のような組み合わせが複雑なもの、曲単位として出来上がっているようなものも少ない。
それにしても、この完成度は流石としか言いようがない出来上がりだ。他では真似できないサンプリングの数にただ圧倒される。

全く音楽性は違うが、グルーヴ感とわずかな緩さがある同じオーストラリアのTame Impalaとなぜかシンクロしてしまう。そのTame ImpalaCourtney Barnetの昨年の成功といい、今非常にオーストラリアの若い世代が熱く強固なものになっていることが手に取るようにわかる。

祝"Frankie Sinatra"の”あ〜パンツ下がっちゃう"でタモリ倶楽部最高評価。

























A Moon Shaped Pool
RADIOHEAD
XL




もうザキングオブリムスから5年も経っていた。
彼らの新譜をリアルタイムで聴くことは僕にとってとても重要なことで、それはビートルズをリアルタイムで聴いていた方々を羨ましがるように、将来レディオヘッドをリアルタイムで聴いていたという事をそこらじゅうの若い世代に話したいというのは少しあります。
じゃなくて、自己満足なんです。

そう、いつもそうだ。
彼らのアルバムは長生きする。僕が彼らの作品を特にひいきして大袈裟な視聴会をセッティングして、あたかも聴き過ぎたらCDがすぐに壊れてしまうくらい脆いものを扱うように聴いていたからだ。

それを無きにしても彼らの作品はいつ聴いても同じ興奮やいつもと違う興奮や感動が湧く。彼らのライブに行ったことがあるでしょうか、おそらく今まで観てきた全てライブの中でも彼らのステージは確実に群を抜いている。第8位のケアテイカーでも同じようなことを書いたが、現代の音楽ではあまりない音楽という娯楽の感動が彼らからは大いに感じる。

内容からすっかり離れてしまったが、このひっそりと森の中に佇むような。うーんなんと形容したら的確かはもはや、他のどのバンドとも形容することが難しくなっている領域である。サウンドはおそらく超高価な機材はもちろん、古いアンティークなアナログの録音機材も多く使われていることは間違いない。その音が物語る空気はアルバムのコンセプトによく馴染む。

曲単位で言えば例のあの曲だけ少し語らさせていただきたいのだが、Identikitという2012年のツアーで披露された新曲が個人的にはレデイオヘッドで最も良い曲として宣伝して回ったが、表情を大きく変えてリニューアルされて登場している。
当初こそ、その変貌ぶりに困惑したがこのリニューアルはAMSPにおいてもっともらしい変化であるといえよう。ライブの"Identikit"も以前とリニューアルされ、アルバムに沿った演奏となっている。こちらも細かいことは言ったらキリがないが、このバージョンも他の曲と馴染んでいい演出効果のひとつとなっている。


サマーソニックでの素晴らしいライブとともにトムヨークと直面した衝撃は、いつまでも僕の記憶中に残るだろう。


















Next Thing
FRANKIE COSMOS
BAYONET RECORDS









お待たせをいたしました、今年のベストアルバムはフランキーコスモスのネクトシングであります。
今年はBayonetの発見が大きくランキングに左右した一年となりました。

フランキーコスモスは本名グレタといい母親に昔女優だったフィービークラインを持つ若干22歳の女子だ。この事実は少々年上の先輩方なら驚きだろう。
ネット配信サイトのバンドキャンプに宅録したデモを大量にアップしていたようで、そのアルバムの数は40を超える。(ほぼ弾き語りがメイン)
2014年にデビュースタジオアルバムとなるZentropyDouble Double Whamyからリリースする。
今年になって初めて聞いた時は彼女のことを知らなかったことを後悔するぐらい可愛らしく女の子の青春を甘辛く歌った学生バンド風のアルバムであった。

youtubeがきっかけだった。なんか変な動画作る子がいるなと思った、同時期にピッチフォークが撮ったジオラマの中でグレタがギターで弾き語る動画。

一瞬で惚れてしまった。
アルバムを即座に聞いてあることに気づく。
全部曲が短いのだ。ああ、これは短編集なんだと感じた。それもそのはずアルバム通して15曲で29分しかないのだ。

そう、これこそが彼女の持ち味なのだ。アルバムの中にいくつものポップでどこかまだ素人感のあるグレタやバンドが作り出すショートドラマが心深くまで染みてくるのだ。グレタの叙情的な歌声と味付けをまったくしないダンエレクトロのちょいへたギター。ベースとシンセとドラムはお友達か、はっきりいて技術はまだまだだが、彼女の作り出すメロディアスな短編集はどうかこの先も才能が"コカツ"しないことをただ祈るばかりだ。

最近のライブ動画をみるとグレタは丸坊主にしたようだ。おそらくトランプ当選の翌週だったので、おそらくそれが原因かと。








1. Next Thing/Frankie Cosmos
2. A Moon Shaped Pool/Radiohead
3. Wildflower/The Avalanches
4. Day Breaks/Norah Jones
5. IV/Badbadnotgood
6. The Hope Six Demolition Project/PJ Harvey
7. Schmilco/Wilco
8. Everywhere at The End of Time/The Caretaker
9. Junk/M83
10. Super Low/Warehouse11. Void Beats/Invocation Trex/Cavern of Anti-Matter
12. Emotional Mugger/Ty Segall
13. Sirens/Nicolas Jaar
14. Skiptracking/Mild High Club15. Toon Time Raw!/Jerry Paper
16. The Bride/Bat For Lashes
17. The View From Nowhere/Matt Carlson
18. Housebound Demigod/G.H.
19. elseq 1-8/Autechre
20. 22,A Million/Bon Iver
21. The Catastrophist/Tortoise
22.Orange Out EP/Tyondai Braxton
23. AIM/M.I.A.
24. Preoccupations/Preoccupations
25. Randoms/Four Tet
26. Sport/Powell
27. Day of The Dead/Various Artist
28. My Woman/Angel Olsen
29. The Digging Remedy/Plaid
30. Too Many Voices/Andy Stott
31. Painting With/Animal Collective
32. Oh No/Jessy Lanza
33. CSLM/Jeese Osborne-Lanthier&Grischa Lichtenberger
34. Light Upon The Lake/Whitney
35. Future Present Past EP/The Strokes




それにしても、今年は名盤が多く揃いました。それが原因でベスト10の編集も書きたいことも多く非常に大変でした。ベスト35から読んでくださった方、どうも有難うございます。よいお年を。

このあと予定では同居人による2016ベストアルバムランキング、そして僕の選ぶベストビデオ2016を予定しております。