2016/12/23

2016ベストアルバム #20~11




それでは20位からお送りしたいと思います。

余談ですが、今年はマイイヤホンのShure535LTDが復活したこともあって、より細部のリスニングがまたできるようになったことは、おそらくランキングに影響しているかと思われます。だが、また故障してしまったんですけどね。








20
22,A Million
Bon Iver
Jagjaguwar

大きな変化と謎めいた雰囲気を持ち合わせた傑作がBon Iverの"22,A Million"だ。
前作までは、フォークというジャンルに含まれていたような気がする、個人的には好き嫌いの問題でうまく波長が合わなかった。過去のこのランキングでもBon Iverがランクインするのは初めてである。 

内容はとても前衛的で、ボーカルの音声は常に変形されておりこれまでなかったノイズ調の電子音が登場し、展開も多種多様に富んだ。非常にクリエイティブといる作品になった。以前のようなどこか無虚を感じるような独特な世界観は健在で、さらに磨きがかかる。
だが、個人的には少々重量を感じてしまうのか最後まで聴き通すことが困難なくらい重い。
















19
elseq1-8
Autechre
Warp


Warpの重鎮Autechreが3年ぶりに姿を現した。暗号のような奇妙なアートワークとともに、完全オリジナルサイトだけでの配信や突如のリリースというこれまた他にはあまりできない独自路線を突き進んでいるような感じだ。5つのパートに分けられた21曲は全曲合わせると4時間8分という途方もなく長い道のりのアルバムである。

サイトのダウンロードはMP3($33)とWAV/FLAC(16BIT/$45)さらにWAV(24BIT/$55)というグレードから選択できる仕組みになっているが、24BITは12BITのハイレゾを上回るクオリティである。おそらく24BITの$55払うツワモノ購入者はオウテカフアンの領域を超えるオウテカよりオウテカな人たちなのだろう。

内容もすごいことになっている、というか毎回内容に関しては脱帽なのだが、今作はとにかく長い。僕も(MP3購入)挑戦したが当然通しで聴くことは1度もできなかった。まるでオウテカの4時間ライブに参加しているようなそんな感じだ。いつも以上にライブ感が高く、リアルタイムでミックスを行なっているような曲もある。さらに言えることが、音が本当に高品質であるということだ、先にも触れたがおそらく24BITを爆音で聴いたら幽体離脱出来るくらいの3次元的な音質になっていることが想像できる。彼らのサウウンドクリエイティブがこれまで到達していなかった領域まで来ているのだ。。















18
Housebound Demigod
G.H.
Modern Love

30位にランクインしたAndy Stottと同じModern LoveからG.H.というアンビエント作品を一枚。本名はGary Hewellと名乗り、ドローン音楽やベルリンダビングと呼ばれるジャンルのプロジェクトを経験しており、今作は彼にとってデビュー作となっている。

前半は暗く重い空気が流れる古い倉庫や工場の環境音のような雰囲気があり、中盤からサンプリング音声と時折ペースが変わる乾いたドラムマシンのリズムがこれまた白と黒だけしかない人間のいなくなった世界を描いているようだ。






17
 The View From Nowhere
Matt Carlson
Shelter Press

こちらはアメリカはポートランドからの実験的な作品。DIY電子音楽ともいうこのジャンル。聴いてみると面白い。リズムのある軽快な曲もあるが、ボコーダーで何層も重ねてメロディにしてみたり、強くエフェクトをかけたシンセが縦横無尽に行ったり来たりしたりと個人的には2016年度版Clusterの"Curiosm"である。

あまりにも編集が大胆で途中笑ってしまう曲もあるほど。宇宙サウンド満載な作品は必聴。うん必聴しなくてもいいかも。このなかでも個人的に秀逸だと思うものを一応あげときます。


























16
The Bride
Bat For Lashes
Parlophone

通算4枚目となりだいぶ成熟が見られるBat For Lashesが16位。当初コンセプトの内容が、結婚式に行く途中に事故にあい新郎を失った花嫁という非常に暗いコンセプトで、シングル曲以外はスローで語り口調の歌が多い。
だが、それが結果的にアルバムの内容を深く濃厚なものにしている。もはやビートの効いたシングル曲が煙たい存在になるくらいで、こんな哀愁感と悲壮感がこもった彼女の新作は今までで最も素晴らしいアルバムだと感じた。

UKチャートも9位というのも納得である。だが、日本はおろか本国UKでも大きな扱いはされないように思われた。初来日公演という夢は一体いつ叶うのだろうか、途方もない夢となってしまった。当ランキング2009年と2012年では共に3位と寛大な評価であったが、当方の趣味が多種多様になったせいもあり今回は控えめな順位となってしまった。
















15
Toon Time Raw!
Jerry Paper
BAYONET RECORDS


なんともかわいらしいアートワークとゆる〜い音楽が現れた。

今年の個人的大発見といえばBeach Fossilsというバンドが最近始めたBAYONET RECORDSというレーベルである。去年の時点ではまだこのレーベルの存在をはじめ、所属するバンドすら知らなかった。

そんなBAYONETからJerry Paperの新作をまず15位に選んだ。メロウで奇妙な世界観のボーカルがクオリテイの高いジャズバンドを率いている。そのバンドが素晴らしく真面目で、彼の妙にくねくねとした存在にマッチする。基本はサイケポップだが、ジャズやラウンジなんかの曲もちらほら。薄暗くなった夕刻の時分を彼らのマイルドでくねくねサイケデリック浸ってみては。

序盤の曲もいいが中盤の#Benny Knowsと#Gracie IIが哀愁こもっていていい感じでてます。
そんな太っ腹な彼らはアルバム全曲サウンドクラウドでさらけ出している。(https://soundcloud.com/bayonetrecords/sets/jerry-paper-toon-time-raw-1
)









14
Skiptracking
Mild High Club
Stones Throw


またまたゆるい感じの音を紹介したいと思います。
Mild High Clubはシカゴ出身のAlexander BrettinがLAで結成したバンドだそうだ、前作"Timeline"に次ぐ2作目だがまだ僕はこのアルバムしか聴いていない。

なんというか、この人すごくポップのツボを知っている方のようで、どの曲もツボを押されまくりな気分になります。
ゆるい感じのややローファイなサイケというかポップなんですけど、ピカイチなポップセンスを何度も何度も出してくる。。












13
Sirens
Nicolas Jaar
OTHER PEOPLE


Nicolas Jaarの新作は静けさと狂騒、つまり静と動が織り成す傑作となった。
前作が"Space Is Only Noise"の2011ならば5年ぶりの新作となる。彼はその間Darksideというバンドを組みこれまた傑作アルバムを作った。そのDarksideの香りがまだ残る、静と動を使いこなしたニコラスが彼自身にしかできないディープな夜の世界を音で体現している。

#Noはこのアルバムでも最もインテリな出来上がりとなっている。
そして、このアルバム。僕はLPを注文したのだが、なんとコインが同封しており、そのコインで白く塗られたジャケットを購入者に削らせ、アートワークを浮かび上がらせるという手法を用いたところもおもしろい。








12
Emotional Mugger
Ty Segall
Drag City

ガレージやノイズロック系のシンガーソングライターのTy Segallによる8作目"Emotional Magger"である。
気持ちよく爽快な歪んだギターが終始炸裂している。前作(13位)から2年ぶりの新譜だ。
彼のガレージバンド以外はあまり聞かなくなっているが、おそらく彼が抜け出た存在であるからだろう。今作はさらに真に迫った感じで磨きがかかっている。










11
Void Beats/Invocation Trex
Cavern of Anti-Matter
Duophonic

ティムゲインがようやく重い腰をあげ、ステレオラブの休止宣言以来細かいプロデュースなどの活動を除いて、約8年ぶりに公の舞台に登場した。”ステレオラブではない”ということ以外はどんなにこの瞬間を待ちわびただろうか。もうステレオラブの復活の予感はほぼなくなってしまっていたし、リマスターの情報も無い状態だったのでこのバンドの結成のニュースは非常に感激した。

去年、彼らは2曲のシングルをリリースし、中でも"Pulsing River Velvet Phase"は過去のステレオラブ作品にこういうインストの曲があったんじゃないかと思うほど懐かしいシンセが心地よい曲だった。アルバムの方も懐かしい感じがオンパレードで”なんだ結局ステレオラブやりたいんじゃん”と言うのを準備していた。
 だが、内容は違っていた。確かにティム特有のカッティングやアナログシンセのメロディなんかは彼の得意とするところだ。しかし、内容は明らかにクラウトロックであり時には激しさを増し、壮大なグルーブ感があったりする。そして唯一のボーカルのあるDeerhunterのBradford Coxが登場する#liquid gateに至っては、他の曲と全くテイストが違い、違和感さえ覚えるも曲とボーカルがいいので存在感は十分だ。


ここに来てティムゲインの制作意欲が湧き、今まで出したことのない色を出し、かつ今までステレオラブで培った技術は惜しみ無く投入して高いクオリティの作品を出しているところをタイムリィに聞けるところは彼らを心底ひいきにしている僕からすると、これほど嬉しく感無量になることはない。

ティムさんよ、レティシアはいつでもあんたのことを待っているんだよ。