2018/12/31

WATARI's BEST ALBUM OF 2018


2018年のマイベストアルバムを30枚選びました。



例年に比べてとても選別に苦労した年となりました。それは紛れもなくApple Musicの再契約が大きく影響してますね。
mixi時代の2007年に始めたこのランキングは12回目となり、より自分が聴き込んだものを選べるようになっていることを願っております。





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#30. MGMT-Little Dark Age
久しぶりの登場。あの”Kids”から10年が経ち、彼らもすっかり見た目も音も大人になっていた。
出だしを除いて、”Little Dark~””When You~”のサイケデリックさは秀逸で完璧だ、彼らの成長をまじまじと感じることができて、前作は個人的に全く受け付けなかったので嬉しかった。だが、残念なのは後半がかなり良くない。参っちゃった。だけど、今回のMGMTに興奮したのは事実で、本当はすごく感動した。次作を大いに期待を込めて。。
フジロックの序盤でタイトル曲Little Dark Ageを聴いて、アナログのシンセの音がビシバシなっていることを確認して、レッドマーキーを後にした。




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#29  D.A.N.-Sonatine
今年のフジロックで初めて見たのが印象的だった。久々の日本からのランクイン。
ベースラインが非常にリズミカルで心地よく、インストでもボーカルがあってもどちらでも耳あたりが良い。邦楽らしいサビでなく、終始緩やかで浮遊感漂う。新譜は必ずチェックします。







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#28 Mitski-Be The Cowboy
個人的にも嬉しいのが日系アメリカ人であるMitskiが今年のベストアルバムに各紙こぞって高評価で1位にも選ばれたということ。前作”Puberty”から大きく変わるのはやはりサウンドのクオリティだろうか。ボリュームのコントロールがうまく、中心的な曲に照準を合わせるかのような配分だ。
90年代の邦楽の雰囲気を思わせるシンセの使い回しやギター、そしてボーカルメロディもだ。松任谷由実や椎名林檎を少し想像してししまう自分がいる。
やはり”Nobody”は圧倒的で、このアルバムの印象的な曲だ。ノーバディノーバディとライブで絶叫したいのは僕だけか。行って損はない、来年2月に来日予定。








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#27 Earl Sweatshirt-Some Rap Songs
混線したラジオの雑踏に迷い込んだような、ローファイなサンプリングとこれまた圧縮したようなラップの音で、時にはノイズまみれでハードなサンプリングもわずかな断片のダブだけの曲もいくつかあり、実際にはすごくシンプルな製作スタイルだがミックスにかなりの時間を費やしたのではないだろうか。これがまた個人的にくすぐるポイントで、25分イコール1曲という認識で聞くことをお勧めします。








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#26 Superorganism-Superorganism
恐らく説明不要とまではいかないかもしれないが、今年かなりブレイクしたバンドの一つで、各国のフェスで引っ張りだこになって日本の公演に至ってはほぼソールドアウトと、スーパーオーガニズムのその勢いを肌で感じる年であった。去年、こんなシングルがあると聴いてから、これはなかなかやるなあなんて思っていたが、ここまでごった煮ミクスチャーなものになるとは思わなかった。ボーカルの日本人であるオロノちゃん。個人的に応援してる高梨沙羅さんに容姿が似過ぎな為、多分生き別れの姉妹だと思います。






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#25 Molly Burch-First Flower
ザ・コーデッツやリンダスコットを彷彿とさせるオールドポップなオースティンのMolly Burch
まるでグレイテスト・ヒッツのようで、どの曲もシングル曲のような雰囲気があり、どの曲も独特のハスキーなボイスでやってくれる。







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#24 Palm-Rock Island
アメリカはフィラデルフィアのエクスプリメンタルロックバンド。前作”Trading Basics”(2015)でその才能を感じて好きになった。2本もしくは3本のギターの不規則な交わりが良いエッセンスとなって、あのThis Heatのサイケデリックにも通づるところも。終始ぶっ飛びそうなメロディ、変拍子、転調の数々と遊びたい放題なのだがどの曲もキャッチーで聴きやすい。ライブは正反対でしかめっ面で演奏しているそうな。
今年の6月にオランダのBest Kept Secret Festivalでは時間の都合で見れなかったのが悔やまれる。まだ日本で見るのは難しいバンドだ。






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#23 Laurel Halo-Raw Silk Uncut Wood
去年のランキングで4位に選んだ名盤”Dust”から一年も経たずにまたローレルヘイローのサンプリングワールドに浸ることができて幸せだ。今回は四つ打ちやキャッチーなメロディは排除され、終始よりアンビエントな内容になっている。コンパクトなサイズ感もあり評価は控えめになってしまったが個人的には思い入れのあるアルバムとなった。この間の来日公演、まだライブ演奏は完璧とは言えないものの、使うサンプリングの音がどれもマニアックで彼女の作るメロディとよく合う。イーライケスラーの世にも奇妙な腕さばきの味付けもあって個人的には記憶に残るライブになった。
京都の公演を見に行く前に寺や庭園を散歩しながら聴くと、不思議なマッチ具合に鳥肌がたった。






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#22 The Internet- Hive Mind
トリップホップ、ソウルからR&Bまで多彩な才能を見せるバンドThe Internetの新作。キュートなボーカルSydの透きとおるような歌声にノリのいいバンド。簡単にノリがいいなんて言っているが、グルーブ感は他を寄せ付けないものがある。序盤の勢いはこのアルバムの見せ場となるほど聴きごたえがあるが、実はメローな後半が良いのでよく聴いてみてほしい。グルーブ感の強い”Look What U Started”や最後をしっとりと飾る”Hold On”などなど。ビルボードでも26位と今後の活躍に期待。







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#21 Noname-Room25
シカゴ育ちのラッパーNoname2nd。この内容でまだレーベルとの契約をしていないんだから驚きだ。知識がないので申し訳ないがここまでできるならこのままフリーでセルフリリースを続けるのもよいのでは?
とにかく音の響きが良い、ボーカル、ドラム、ベースが特に気持ちいい。なんでもありな感じもおそらくプロデューサーでもありアルバムに参加しているPhoelix氏の腕だろうか。次世代R&Bとヒップホップ。









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#20 Tirzah-Devotion
何に例えたらこのアルバムを説明できるのか僕にはちょっと知識が足りなくて形容できない。だがTirzahは明らかに才能豊かで一線超えた何かを持っている。エッセンスは多種多様なものから由来していることは言える。ほぼスローでどことなく
ArcaJames Blakeなどのアバンギャルドさが垣間見える。ボーカルはR&Bかな。なぜか2回くらい聞いた時はHip Hopなのかと思っていた。今年個人的に豊作のDominoから。






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#19 Jerry Paper-Like a Baby
2016年のコラボレーションアルバム”Toon Time Raw!”でその存在を知ったJarry PaperことLucas Nathanの新作。前作はコラボレーションということだったのだが、2016年のランキングでフランキーコスモスを1位に選ぼうと思った時、レーベルのBayonetを調べて彼にたどり着いた。終始とろけそうなゆるいバリトンボイスにローファイながらもしっかりとしたメローなバンドが背後に控えている。一聴するだけでこの良さをすぐに気付くはずだし、何かの作業に打ち込んでいる時のBGMにしたらよりリラックスした状態でそれがはかどるだろう。前回はBadbadnothoodと共同制作という形だったが(最近知って驚いた) 今作はBadbad~Matty Tavaresが共同でプロデュースしているとのこと。それで何だが個人的にこのゆるさの中にあるやけにどっしりした感じの謎がとけた感じがした。




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#18 Loma-Loma
去年、先行シングル”Black Willow”を出し、今年まんを持してデビューしたLoma
ドリーミーでムーディ、Emily Crossの絞り出すようなボーカル。今年のインディーシーンのアンセムになってもおかしくない。何故かこのアルバムを聴くと僕はアジアのどこかの国をいつも思い出す。民族音楽ではないけど、彼らのシリアスなサウンドが心地良くいつまでも聴いていられるのだ。
このバンドの前身のSearwaterも押さえておくことにしよう。





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#17 The Voidz- Virtue
今年のいろんなアルバムランキングのどこを見ても、このThe Voidzの名前は見つけられなかった。でも、そんなに無視できる存在では全くないということを聴けばわかるかもしれない。ストロークスのジュリアンだからといってストロークスしかできないなんて思っちゃいけない。Phoenixで叩いていたドラマーのAlexの必要以上な演出の演奏、メインのツインギターも緩さがたまらないし何と言ってもジュリアンの本気なのか適当なのかわからない加減さ。だが前半はキャッチーで打ち込みドラムなんかもかなりセンスがあって聞き応え十分。ストロークスは充電中のようだが、ファンでも納得の一枚。







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#16 Actress & London Contemporary Orchestra- LAGEOS
アクトレスの良さであるローファイで強みのあるエレクトロ、それにロンドンのコンテンポラリーオーケストラという聞いただけでワクワクする組み合わせだ。
“Galua Beat”は時に攻撃的なビートにじんわりとエキセントリックなヴァイオリンがフェードインしたり、その音ひとつひとつはどれもシンクロしておらず開放的でより独創的な演出がなされる。リード曲の”Audio Track5”は彼らのエレクトロとオーケストラの2つの長所をうまく4つ打ちで融合させたもので、実験ものをにらめっこしなくても聴ける作品だ。かと思えば次の曲は歴史ビデオのBGMのような壮大さを弦楽器とピアノが作り出し、生のパーカッションが引き立て役に回る。名実験作。
5年前くらいにちょっとした事情で見たことがあったんだけど、その時はアイドルみたいな女の子という印象が強くて、それがなかなかぬぐいきれなかった。みるみるうちに彼女は有名になって今やトップシンガーの一人になっていた。前作”Dangerous Woman”から、あれ、これ結構いけるなと言う感覚があっただけにちょっと新譜が楽しみだった。最初はさらっと聴いていたがそのうち虜に。
スウィートで過激な歌詞に有名なフィーチャーばかりで目移りしそうだが、(ミスター”feat.”のファレルウィリアムズも) 曲自体は意外とさっぱりしていてシンプルでド派手に盛り上げたりなんて一切しないところも今回の良いところ。バスドラのオフビートが小気味よい”R.E.M”なんていう個人的に心拍数の上がるタイトルの曲もある、Mの後にドットが1つ足りないよって言いたいというのは余談。
快心の一作。





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#14 Father John Misty-God’s Favorite Customer
去年の”Pure Comedy”からあっという間に新譜を出した。役者のようなその振る舞いは彼の大きな魅力の一つだろうし、聴き手をジョシュアワールドに誘うかのように語りかけるような歌い方はもう特許ものである。個人的にツボだったのは、今年オランダのBest Kept Secretで見たときの映像だ。
”Mr.Tillman”まあタイトルもツッコミどころ満載なんだが、映像が90年代風のCMのような作りだった。遊び心も高く、冗談ばかり言う。だけど曲はシリアスで一切ふざけていない。個人的には”The Palace”がおすすめ、ここ最近のアルバムは傑作続きだ。




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#13 Sam Gendel & Sam Wilkes-Music for Saxophone & Bass Guitar
サクソフォン奏者のSam GendelSam Wilkes のデュオ作品、実験的なジャズで音をこもらしたサックスにセッションスタイルのベースが続く、野外で録音したような屋外の音のサンプリング(?)のおかげでよりアートで前衛的なものなっている。サイズもコンパクトで33分。
ワイパーが雨にあたる窓ガラスをこすりながら聴いていたら、青信号に変わったことを見落とすぐらい引き込まれていた。
つま恋でやったFestival de Frueに来日していたのだが、30分セットという事もあり行くのを諦めたのが悔やまれる。





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#12 Kamaal Williams-The Return
僕の今年の大発見といえば松岡直也氏のハートカクテルのサウンドトラックであろう。ある日、僕が小学生のとき擦り切れるほど見ていた電車のビデオの動画を発見した。そこで流れていた音楽、それが松岡直也氏のハートカクテルだった。なんとApple Musicにあった事によってその日以降、僕のBGMになることが多かった。いかにも80年代のややディスコ寄りのフュージョンでホームセンターとか昔のTVKのベイブリッジの映像とかで流れているそれ それからフュージョンを聞くようになるも、なかなか良いものが見つからない。新譜はさらに数が少ないなか、見つけたのがこれだ。話は遠回りしたが、ドラムとベースの疾走感、安定のキーボード。一発撮りなのか、演奏者の掛け声なんかも臨場感がある。





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#11 Unknown Mortal Orchestra-Sex & Food
タイトルに驚くことなかれ、中身も驚きの連続の一枚だ。
やはりアンノウンといえば1stの記憶が鮮明だが、もはや1stを引っ張っていることはなく新しい物の方がより良い作品になっている。ライブでも完成度が最近の曲の方が圧倒的だ、2枚目以降は毎回その成長に驚かされる。4枚目になって今までの熟練した演奏、サイケデリックな部分、エレクトリック、そしてロックンロール。全てにおいて完成形になったのではないだろうか。タイプの違う曲が多いなか個人的には”Hunnybee”のゆったりと歌いながらも相対的などっしりとしたベースラインがなんとも美しい。




ベスト10はもっと濃厚な予感。





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#10 Virginia Wing-Ecstatic Arrow
マンチェスター拠点という珍しいデュオVirginia Wing3枚目ぐらいだという新譜。エレクトロポップ調のシンセとバンドだが、メロディーはアバンギャルドで曲ごとの自由度の高い構成、民族楽器、そして超効果的なサクソフォン、僕はこれで一気に惚れ込んでしまった。2曲目の”The Second Shift”の前衛的なポップはサックスの効果が最も出ている曲だ。まだまだ活動も少ないし注目度も決して高くないのでその姿を見ることができるのはだいぶ先になりそうだ。このバンドは全員女子じゃないが、去年の4Girl Rayそして今年はGoat GirlDream Wifeなどといったイギリス女子バンドが元気なところを見せている。これからも注目だ。






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#9 DJ Koze-Knock Knock
ドイツのDJコージー。
Bon Iverをサンプリングした”Bonfire”の美しいビートで前半のハイライトかと思えば、そこからフルコースが2回分出てくるようなボリュームのあるアルバム。DJ Kozeはこの1時間20分のミックステープのようなアルバムで大きく評価されることになるだろう。
聴き手と踊り手を休ませないそのビートは最後まで味わい深い音の数々で安っぽさは一切ない。どの部分を切り取って聴いても面白いし、通しで延々と聴くのもいい。個人的にはスペースサウンドが浮遊する”Baby (How Much I LFO You)”が好きだ。




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#8 Mick Jenkins-Pieces of A Man
米アラバマ州のラッパーMick Jenkins2nd。個人的には2016年のBadbadnotgood”IV”でフィーチャーされたのが記憶に新しい。このアルバムにも”Padded Locks”Badbad~”Speaking Gently”が永遠にループされているのだが、これがなんとも心地良く互いに相思相愛なことが想像できる。そして最後の曲”Smoking Song”ではbadbad~の本気が垣間見えるのでひとつ必聴していただきたい。(今年は心を込めてBadbad~に助演男優賞をお送りしたい)
アルバムの雰囲気はこれ以上なく良く変拍子のモダンジャズや、生音、電子音と全て完成度の高い音がバックで鳴っていてストリートスタイルのラップ。これはいい!
僕の2018年ベストラップアルバム。





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#7 Janelle Monáe-Dirty Computer 
壮大なコンセプトが下敷きにあるようで、このアルバムのショートフィルムが大いにアルバムそのものと互換性を持っていて大きくヴィジュアライズされる作品だ。アルバム+ムービー=Dirty Computerと捉えた方が良いだろう。ムービーの方には残念ながらゲストの参加はないものの、何度見てもユニークでカラフルで面白い。
アルバムの冒頭、ビーチボーイズのブライアンウィルソンおなじみのファルセットが聴けるなんて超贅沢な幕開けで始まり、そして今やテスラのように遠い存在となってしまったGrimes参加の”Pynk”の世界観も映画一本出来そうなくらいクオリティが高い。
ライブ映像をちょこっとだけみたら、ステージにこだわりがありそうなもので、これは生で見ないといけないなと思い、来年のスペインで行われるフェスのPrimavera Soundに行く引き金となる勢いだ。
スーパーボウルのハーフタイムショーに出るくらいのスターになるのはもうすぐ?





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#6 U.S. Girls-In a Poem Unlimited
彼女をようやくトップ10に選ぶ事が出来て僕も嬉しい。自分が作っているランキングなんだから勝手に選べよと言われてしまえばその通りなんだが、ここはやはり自分の愛情と良いと思うか思わないか別で、大体愛情と評価(2:8)ぐらいで選んでいるつもり。だから彼女に関しては、過去の実験的で特異なアンダーグラウンドサウンドをうまく評価できないでいた
この話は何度も書いたけど、約8年前ひとりでロンドンに行った時にネットカフェでライブを手当たり次第探していて面白そうだったので行くことにした。小さなバーというかパブで実験的ミュージシャンたちのライブをやっていた。U.S Girlsは一応ラストの出番で、客席とステージの隔てがなく機材がお店のテーブルの上に置かれていた。その光景は奇妙で、沢山のカセットテープに重々しいカセットデッキ、そこにはこれまた大量のエフェクター。ドラムマシン。記憶に残っているのはマイクの横に黄色いクマのぬいぐるみだ。それを開演前に客がマニアックな楽器屋に来たかのように気がすむまで吟味していた。
当時のU.S.Girlsの楽曲は前作の4AD移籍後の聴きやすさはほとんどなく、ライブの方も何を録音したらそんな音になるのかわからないほどノイズまじりの何かが録音されたカセットに合わせてこれまたエフェクトのかかりまくったマイクで何かをぶつぶつと言ったり、叫んだりというスタイルだった。。

彼女の転機になったのはやはり3年前の4AD移籍だろう。プロデューサーも外部からやってきて彼女のスタイルは大きく変貌を遂げた、前作の大改修は以前のものとのバランスがまだうまく絡んでいない面や曲の数もEPブラスおまけ感もあったが今作は完成度がどの曲も高い。どうしても見たいのはライブだ、ここまでライブのスタイルを変貌しているのも彼女の特徴だ。余談だが、今年パリからエールフランスに乗ったときこのアルバムの”Rosebud”が流れていた。機内に彼女のことを知っている人はほぼ皆無だったかもしれないが、嬉しくて鳥肌が立った。もうあの大量のカセットテープはもう棚の中で埃をかぶっているかもね。







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#5 Arctic Monkeys-Tranquility Base Hotel & Casino
かつてこれまでアークティックモンキーズのことをここまで愛おしく思ったことは無かった。もちろん過去の作品を否定しているわけでは全くない、2000年代の彼らの稲妻のような登場と活躍はいつまでも忘れることはないだろう。だが、個人的にいえば僕のメインストリームではなく少し距離を置いだ状態だった。アルバムごとに大勢が注目していくなか、前作”AM”では大人びた彼らの姿を垣間見え僕のストライクゾーンぎりぎりまで接近していた。
そしてこのアルバムだ。およそ2,3周目であろうか、そこまで理解するのに時間は必要なかった。珍しく他人の意見が気になって読んでみると、面白いことに綺麗に半分に分かれていた。こんな事は非常に珍しくプロアマ共に困惑、混乱していたことが察することができた。彼らの往年のファンならこれを聴いて愕然とする気持ちはわからないでもない、だがこれが本当にArctic Monkeysにしかできないと思うと唯一無二の超傑作だと思えることができる。。
コンセプトは空想の話で、月にあるリゾート地のホテルでおそらく男が奮闘するというオカルト近未来的SFに目がない僕としては興奮する。彼の歌詞は時に映画のセリフの断片ような詩的で、苦悩する男がよく描かれる。

アイスランド北西部で宿を目指して長い時間車を走らせ、このアルバムを何周もさせていると本当に月に来てしまったかのような感覚に陥った。









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#4 A.A.L.(Against All Logic)/2012-2017

Nicolas Jaarによるサンプリングコンピレーション。ここまでエッジの効いたバスドラにハイハット、ファンクなボーカル、ローファイなスーパーベース。余すところなくニコラスジャーの才能をどうぞご堪能ください。
2018年で最も優れたダンスチューンとなったこのアルバムは当初誰が出したのかわからないほどひっそりとリリースされた。噂が広まりようやくニコラスジャーのアルバムということがわかったそうだが、この名義でかつてライブやっていたそうだ。もし、このアルバムのフルセットでライブをやったら間違いなくベストアクト級の炸裂チューンのオンパレードで想像しただけで興奮する。
最近はあまりテクノやエレクトロのライブを観てないな。









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#3 Joseph Shabason-Anne
今年の第3位はカナダのサクソフォン奏者Joseph Shabason2作目(?)”Anne”です。身体の芯まで響くサクソフォンを心ゆくまで味わう。

なぜだろう、今年はやけにサックスが入ったアルバムを多く聴くようになった。こちらのサックスはエフェクトをかけてるものが多いのでよりアートな作品になっている。
2014年のThe War on Drugs”Lost in the Dream”のキーボードを担当していた実績からもシンセの使い回しのセンスにも惚れぼれする瞬間が何度も訪れ、哀愁こもったサックスがこれまた痺れる。
タイトルの”Anne”とはJoseph Shabasonの母の名で、パーキンソン病と闘う彼女のインタビューを録音したものを使い楽曲を製作したという。そのAnneの声と思われるサンプリングとJosephのシンセとサックスは非常に高い緊張感をつくり、序盤の”Forest Run”やボーカルのループダブが美しい”Toh Koh”が秀逸で、実生活においてどのような場面でも五感が研ぎ澄まされるようなBGMになるでしょう。

この間京都に行った時、ほとんどこのアルバムとローレルヘイローのアルバムを聴きながら歩き回った。ローレルの方はどことなく冒険心を煽り京都の風景が前衛的で今までみたことのないもののように映り、こちらJosephの方は逆に自分自身の内面の中に入っていくような感覚で、最新の自分というものを観察しているような気分になった。
今年最もヒーリング効果のある作品。









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#2 Julia Holter-Aviary

あっぱれ。今年最もエキセントリックな1時間30分の世界。
こいつには本当に参りました。これこそまさにポストインディーズの革命児なのかもしれない。これを聴いて万歳三唱しようとしたのは私だけでしょうか。
それほどジュリア・ホルターの4作目は圧倒的な空気感に包まれている。大部分は実験的なアンビエントや悲壮感漂うピアノとボーカルという並びなのだが”Whether””Underneath the Moon”そして”Les Jeux to You”の中核的な3曲がさらに彩りを独創的で別世界なものになっている。もちろん他の曲がなければこれらの流れも垣間見えなかっだろう。

始めてこのアルバムを聴いて“Les Jeux to You”までたどり着いたあなた、一体何を思うだろう。もうすでに1時間を超え一般的なアルバムの時間からすると大体アルバムも終わっている頃だ。僕はこの曲にたどり着き、途中からわずかなトリップ状態になり笑いが止まらなくなってしまった。別にアップテンポやキャッチーを待っていたわけでなく、聴き通していただけなのに突然竜巻が襲ってきたように摩訶不思議コミカルゾーンに突入する。
ここまで喜怒哀楽の激しく実験的かつキャッチーなメロディ、底知れぬ才能にただただ呆然としていた。この素晴らしいアルバムを2位にするのは本当に残念なことですが、この後の1位がこれをさらに上回る大作。なのです。

Experimental Queenここに現る。










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#1 Beach House-7
この数年は彼らが我が音楽ライブラリの頂点に立つ存在であり、彼らの曲を聴かなかった日がないだけに僕の個人的愛情評価が大いに加味されている事はひとつ了承していただきたい。だがその偏った評価がなかったとしても”7”は明らかに2018年のベストアルバムであるという事をはっきりとお伝えしたい。

去年からApple Musicを再開して年間契約をした。膨大な量の音楽が瞬時に何の手続きもなく目の前に現れる様は興奮を超えストリーミング配信の恐ろしさも感じた。いうまでもなく聴きたいアルバムが山積みになり宿題を増やさせ、どの新譜もすぐに評価サイト(どうやら今のところ日本にはまだない)でプロアマ問わず分析、評価され、それらももれなくストリーミングで徹底的に裏付けることできるのだ。
かつては小規模のレーベルの作品などは輸入コストなどを考えると手が出にくかったが今はそういった深いところまであっという間にフルで聴ける。提供しているアーティストには収入などでは賛否両論もあるのは確かで現実にライブ活動等の収入の比率が増している事実も大いにあるという。だからなのか、最近中堅あたりのバンドのライブ動画が少なくなった気がする。

脱線してしまったが、昨年発表のBサイド集を含めなければ6th “Thank Your Lucky Stars”5th”Depression Cherry”から3年たっており、いつもの2年おきの製作スパンからすると幾分時間がかかったようだったが、この内容であれば長いとは全く感じない。
ビーチハウスが最も形容されるジャンルはドリームポップであり彼らはその中心的存在である。だが、一度このアルバムの蓋を開けてみれば今までのドリームポップと呼ばれる様相は一変していることが伺えられる。

”Dark Spring””Pay No Mind”の息のあったコンビネーションでこれまでにない疾走感のあるスタートを決め、彼らの代表曲になりうる名曲”Lemon Glow”が僕の心を一気に空中まで浮かせてくれる、続く”L’Inconnue”では初めてとなるフランス語歌詞を交え後半のドラムロールとシンセのマッチングは新生ビーチハウスを物語る上でのキーとなるだろう。実はこの曲”This Must Be Only Fantasy”という2013年の短編映画で提供したサントラのリメイク版であったのだ。
後半も畳み掛けるようなシングル盤的ソングが次々と登場する。”Drunk in LA”
“Woo”では心地よいリズムに女性のサンプリングとヴィクトリアの二重に被せたボーカルと、彼らのなかではかつてない発想がビーチハウスの成長を物語り”Girls of The Year””Last Ride” では逆にビーチハウスらしいスローテンポでアルバムを締めくくっている。

そう、”7”はすべての曲が重要で、頑固で、力強く、全ての曲が長所でもあり短所でもある。こんなアルバムを生で体験できたのは本当に喜ばしいことで、10年に一度あるかないかの出来事であった。切実に彼らの再来日を願うが、残念ながら今のところそのニュースはまだない。もしくは来年どこかの国でライブを見にいくか、この”7”のツアーを見逃したらおそらくこのアルバムのツアーは二度とない、切羽詰まった判断が必要となった。

個人的に今年は評価サイトを通じて様々な聴き手側の側面を見ることができ、いつもと違った充実した音楽ライフを送ることができた。来年もたくさんのアルバムに出会いたい。
とても余談だがThe Chainsmokersという人気DJデュオが今年出した”Beach House”というシングルを出した。youtubeにたくさん現れて当初困惑していたが、実はこのBeach Houseから由来していた事は少し驚いた。



2018 ALBUM LIST
#1
7
Beach House
#2
Aviary
Julia Holter
#3
Anne
Joseph Shabason
#4
2012-2017
A.A.L. (Against All Logic)
#5
Tranquility Base Hotel & Casino
Arctic Monkeys
#6
In A Poem Unlimited
U.S. Girls
#7
Dirty Computer
Janelle Monáe
#8
Pieces of A Man
Mick Jenkins
#9
Knock Knock
DJ Koze
#10
Ecstatic Arrow
Virginia Wing
#11
Sex & Food
Unknown Mortal Orchestra
#12
The Return
Kamaal Wiiams
#13
Music for Saxophone and Base Guitar
Sam Gendel / Sam Wilkes
#14
God’s Favorite Customer
Father John Misty
#15
Sweetener
Ariana Grande
#16
Lageos
Actress x London Contemporary Orchestra
#17
Virtue
The Voidz
#18
LOMA
LOMA
#19
Devotion
Tirzah
#20
Like a Baby
Jerry Paper
#21
Room 25
No Name
#22
Hive Mind
The Internet
#23
Raw Silk Uncut Wood
Laurel Halo
#24
Rock Island
Palm
#25
First Flower
Molly Burch
#26
Superorganism
Superorganism
#27
Some Rap Songs
Earl Sweatshirt
#28
Be the Cowboy
Mitski
#29
Sonatine
D.A.N.
#30
Little Dark Age
MGMT