2017/12/22

Best Albums of 2017 (Watari)


早くもこの季節がやってまいりました。

2007年から始まったこのわたりランキングも11回目となりました。2017年はどんな年でしたか?
さあ2017年もいよいよ佳境をむかえ、今年よく聴いたアルバムを整理しました。
今年は例年と比べ個人的に選ぶのが大変だったということもあり豊作であったといえるのではないでしょうか。ジャンルに関してはあまり変化はありませんが今回は少しいつもより絞って22枚にしてみました。









#22 
Kelly Lee Owens
Kelly Lee Owens
Smalltown Supersound (UK)


今年のはじめに各紙で評判を受け、その後あっさりとハマってしまったケリー・リー・オーウェンズ。
正統派なエレクトロのビートに親しみやすいドリームポップ的なボーカル。彼女のデビューアルバムは森の中にひっそりと佇む隠れ家のような印象の作品である。
冒頭2曲はやさしい歌声にエコーが漂う。"Anxi"からははっきりとしたボーカルになり、力強いビートに全く動揺しないケリーのボーカルには妙な安心感を抱く。音数が少なく、ライトと思われるかもしれないが、十分に納得のいく作品だと思う。





#21
3D-Catalogue
KRAFTWERK
Kling Klang/EMI (GER)



今まで製作されたアルバムを3D映像にしてツアーを行った音源のミックス版で、最新ツアーの基本となる音源を楽しむことができる貴重な作品である。
The MIX(1990)のコンプリート盤とでも言える作品で、クラフトワークらしい無機質なリミックスで音質も素晴らしい。ボーカルも含めて全て一から作られていることも特筆しておきたい。メンバーは70歳を超え、さらなる期待はあまりできないが精力的に活動している彼らをみると新作の期待は拭えない。彼らにはより一層のリスペクトを払うべきだろう。




#20
Off The Radar
Noga Erez
CITY SLANG (Israel)



突如イスラエルから現れたダンスチューン。その音の力強さは彼女のバックグラウンドや社会情勢といったなんらかのイスラエルという場所から湧き出てくるものなのだろうか。彼女のその暗く震えるような低音の歌声はまた僕を魅了させる。。。





#19
Crack-Up
Fleet Foxes
Nonsuch (US)


僕はあまり多くの能書きをこのバンドに対して言うことができないのが残念なほどいいアルバムです。
圧巻の展開から始まる一曲目でほとんどの得点を稼いでいるくらい素晴らしい曲から始まる。以前にくらべ躍動感がすごいし確実に進歩しているという実感がどの曲からも伝わることが、今回の僕の高評価につながったといえる。という薄い感想はともかく、2018年1月18日来日公演が予定されているので是非見に行きたいところだ。







#18
B-Sides and Rarlities
Beach House
Sub Pop/Bella Union (US)



この数年間僕はどれだけBeach Houseにお世話になっているのだろう。毎日毎日、ほんとうに毎日聴いている、飽きもこず。それもやはり2015年に発表した"Thank Your Lucky Stars"と"Depression Cherry"の2つがあまりにも大きい存在となっているからだろう
。2年経った今も聴かない日がないくらいだ。
依然としてその2つのアルバムを最大級に楽しみ続けている途中だが、今回の作品はBサイドとレア曲そして2015年の2つのアルバムから外れた曲をまとめたものがこの"B-Sides and Ralities"である。
ビーチハウス結成初期のシングルのB面やitunes Session、そして新曲である"Chariot"や"Baseball Diamond"といった曲たちがうまく融合していて一つのアルバムとして聞くことができる作品だ。
ここ最近彼らは商業的なセールスをしすぎないよう心がけているスタンスのようでメディアや広告はより少なくなってきている。しかし、彼らの製作意欲は強いようでおそらく今もアメリカの田舎なんかでレコーディングをしているんじゃないかな。






#17
The Ooz
King Krule
True Panther/XL (UK)



近々のダブステップやヒップホップ、新時代のジャズを予感させる"Bad Bad Not Good"といったダウナーでクールなサウンドの頂点に一気に躍り出てしまったかのような迫力がある若干23歳の"King Krule"。昔から続くイギリスらしい深みのある暗さと憂鬱さ。永遠に拭うことのできない怒りと絶望的な悩みを抱いているかのような表現。これらはまさしく伝統的なサウンドだ。

ブリグジットでイギリスが混沌としているなか若者たちは一体何を表現していくのか。これからもイギリスのシーンに期待したい。







#16
Utopia
Bjork
One Little Indian (Iceland)



アイスランドの永遠の歌姫、今尚前人未到のクリエティブを目指して。

フジロックでのビョークのステージを見終え、あれをフジロックのヘッドライナーでできるのはやはりビョークしかできないのだろうと思いながら歩いていた。
これまでも異色で一際目立ったコンセプトでアルバムやライブを行ってきたが、今のコンセプトは全くポップ・ミュージックとは無縁でこれをどうやって説明していいのかわからない。
僕なんかが説明すると滑稽で間抜けな例えばかりになってしまうだろう。簡単に説明できるなら、ArcaとJesse Kandaという凄まじく異才を放った彼らとの融合により未知のエリアに入り込んでいる。余談だが、今年のフジロックの個人的ベストアクトはArca &Jesse Kandaの気違いじみたステージだ。

















#15
Pleasure
Feist
Universal (CAN)




Feistの4作目、"Pleasure"は底知れぬ感情と思いを垣間見ることのできる詩的で難解なストーリーだ。そのひとつひとつは丹念に製作されたようで、とてもセンシティブですぐに砕け散ってしまいそうな壊れ物のようなものであるようだ。
前作まであったのどかで牧歌的なやさしさのあるポップは無く、深く内省的に感情が強いことが伺える。そのことが反面して僕の心を予想外に貫いてどっしりと重く感じてしまったので、上位より少し下げた評価にした。
だが、Feistにとって今作が最高傑作であることは間違いないし、これからも聴いて行きたい重要なアルバムであることは間違いない。先日のライブでは今彼女が脂が乗って最も充実していることが伝わってくるものだった。













#14

Mnestic Presure
Lee Gamble
Hyper Dub (UK)





イギリスはバーミンガム出身のテクノとかIDMをやっている人なんですが、これはすごい。

一度聴き始めるとなかなか止めることのできないほど集中して聴いてしまう。彼の作り出す唐突に出る音の数々は聞くものを魅了する。それは気味悪さとか不愉快なノイズといったものでは無く、どれもしっくりくる音なのだ。インダストリアルな場面からダブステップかと思いきや突如ドラムンベースの疾走するようなビートが飛び交う。それも音が個人的に好みなので音量をあげてもストレスにならない。とても聞き応えのある一枚。












#13
1992
Princess Nokia
-Self Released- (US)



ニューヨークのハーレムを拠点にしているPrincess Nokiaのデビュー作なのかな?どうやらこの作品は去年(2016年)のデジタルのミックステープからのリマスター盤のようである。
最初に聞いたのはBBCのiPlayerで音楽番組を聞いていた時にかかっていた。BBC iPlayerは大変便利でその時に番組で流している曲を表示してくれるので検索もすぐできるわけだ。話はそれたが、この宅録丸出しなかんじのリズムやサンプリングなんかがセンス良く、彼女の聞き応えあるエネルギッシュなラップがまた心をくすぐられる。







#12
Melodorama
Lorde
Republic/LAVA (NZ)


ニュージーランド出身のLordeの2枚目の新作。まだ21歳と言うのも驚きだが、前作でグラミー賞をいくつか受賞していきなりスターダムにのしあがって早4年が経ったというのだ。そして満を辞して(個人的には)というか一番脂の乗った彼女の最高潮のタイミングでのステージをフジロックで見ることができた。一番驚いたのは言うまでも無くオーディエンスを惹きつける力がとてつもなく強いことだった。











#11
Pure Comedy
Father John Misty
Sub Pop / Bella Union (US)













色気のある甘いボーカル、Father John Mistyことジョシュア・ティルマンの新作はとどまることの知らない作品だ。しっとりとしたポップ"Pure Comedy"から彼なりのエンジンフルパワーで初まったかと思いきや続々とジョシュアワールド前回の美しいメロディとボイスが響き渡る。Leaving LAはまだこの曲やっていたのかと思わせるほど長い曲なのだが、これはこれでライブなんかで見てみたいものだ。。

そう来年の2月には待望の来日公演がある。フジロックの記憶もまだあるなかでのこのタイミングは嬉しい限り。












#10
Dirty Projectors
Dirty Projectors
Domino (US)



前作"Swing Lo Magellan"から5年を経て新作が発表された。タイトルはバンド名と同じDirty Projectorsである。これはリスタートという意味なのか、今作が頂点なのか、はたまた終焉を意味するのかはわからない。
しかし、前作までの数作品のファンであった僕からすると受け入れがたい事実が明らかになる。それは中心人物であるデイブ以外のバンドメンバーがバンドから去っていたということであった。アルバムの内容も今までとは大きく分岐しており得意だったあの複雑なコーラスやリズミカルなドラムはもうない。デジタルが圧倒的に占めており、彼の弾くギターさえもあまり登場しなくなってしまっている。

メンバーは彼だけになってしまったが、元バトルスで秀逸な実験的エレクトロでおなじみのタイヨンダイが強力なプロデュースをデイブと共に繰り広げている。その融合が新生"Dirty Projectors"を本物にしたとぼくは思う。非常に残念なのがこのアルバムをライブで再現されていないところだ。数回ライブをやっていたがどれもとても賞賛できるものではない、来年はライブを精力的に行ってもらいたいのがファンとしての希望です。












#9
Humanz
Gorillaz
Parlophone (UK)



今年は彼ら無くして音楽シーンは語れないほど重要な一枚だろう。相変わらず多くのゲストがおり、スーパーデラックス盤ともなるとなんと34曲も収録になり90分を超える大作となっている。Hip-HopからはVince StaplesやPusha Tのような気鋭がいる中Grace JonesやMavis Staplesといった偉大なシンガー達も名を連ねたまさに豪華オムニバス歌番組となっている。そんな中ただ1人中心人物のデーモンアルバーンだけが哀愁こもったブリットポップをこれでもか絞り出しているところがよい。
フジロックでは期待するほどゲストは多くなかったものの、最新のラップをグリーンステージで聴ける喜びに浸っていた。







#8
Love What Survives
Mount Kimbie
WARP (UK)





今年充実したアルバム探索ができた一年だったと思う。月並みに良いアルバムが出てくるので聞く作業に追われる現象すら起きた。そうなると残念なのが最初の印象が悪くて聞かなくなると完全に記憶から消えてしまうので比べることが難しくなってしまうことだ。そういう時に限って、次に出たアルバムが良くて後追いしてみると実際すごく良かったりしてランキングに入れなかったことを後悔する。そんなことがよくある。
このマウントキンビーは前回全くといって良いほどノーマークだったし、あまり聞かなかった。これを聴き始めて特に前作を聞いていなかったことを後悔もしないくらい今作が素晴らしいアルバムだった。











#7
Reputation
Taylor Swift
Big Machine/Universal(US)


ようこそテイラースウィフトさん。このランキング初登場です。
テイラースウィフトのことは恥ずかしながらほとんど知りません、過去の作品も聴いたことがないに等しく、彼女のことについての情報は極めて薄いことはご了承いただきたい。
今年の秋口にシングル"Look What You Made Me Do"が発表された時、衝撃をうけてしまった。それはポップソングの王道のような曲の展開ながらも、僕の感情が揺れ動いた。ドラマティックだった。
"I'm sorry, the old Taylor can't come to the phone right now. Why? 'Cause she's dead'"(Look What You Made Me Doより)
そう、以前のテイラーはもう死んだ。いや、これは彼女の変わりたいという願望がそのままストレートに歌詞に書いたのだろう。

そしてアルバムを通して聴いた時。これはもう僕が食わず嫌いするような代物ではないことがはっきりとわかった。どの曲もすんなりとリズムを刻めるし、もちろんキャッチーだが、まったく飽きさせることなくアルバムの終盤まで運んでくれる。何をとってもやはりテイラースウィフト本人のボーカルの表現がポップを超えた感情をもっていることだろう。おそらく何か爆発させたい思いなのだろうか。
これほどこのアルバムが良いと思えることの嬉しさは計り知れない。









#6
Sleep Well Beast
The National
4AD (US)


今年は実生活において不安定な年であったと言わざるをえない。それは今年スイスにいったことであるのだが、滞在中どうしようもなく辛くこのままスイスの土になってしまおうか。それほどまでになってしまっていた時に彼らが奇跡的なタイミングで ”The System Only Dreams in Total Darkness"を発表したのだった。
感動を通り越し、ただ涙が滴るだけで僕の中身は空洞のように空っぽでしばらく何も考えることすらできないほどこの曲に感動した。犬畜生だった自分を取り戻し日本に帰るまでこの曲を何百回聞いたことかわからない。とにかく忘れ去りたかった。今は冷静さを取り戻し、ようやくホットドッグのことも眠りから覚めて来年は本格化させるつもりだ!素晴らしい2018年に乾杯を!ナショナルに祝杯を!

ありがとう"The System Only Dreams in Total Darknes"!!!!!!!!!!!!














#5
Earl Grey
Girl Ray
もしもしRecords (UK)


今年のWATARI新人賞はこのGirl Rayに決定であることは間違いない。聴き始めは今年デビューしたバンドというとある特集を読んでいろいろ聴いてみたのだが、このバンドのセンスのよさは他を忘れさせるくらい惹きつけられるものがあった。ロンドン北部のどこにでもいそうな20歳前後の若い3人の女の子なんだけど、なんでこんなに哀愁こもった曲がこうもあっさりとしかもいくつも作ることができるのか訊きたい。
どの曲もシングルのようにキャッチーで全てリード曲といっても良いくらい。少し不安定でゆるく自由でかつポップなメロディーは、アルバムが終わるまで続いていく。

"Where am I now?/ If I listen to myself/ I'll be better"









#4
Dust
Laurel Halo
Hyper Dub (US/GER)


イギリスのエレクトロ名門ハイパーダブからベルリンを拠点にするミシガン出身のローレルヘイローの傑作。様々な分野からのインスピレーションを与えられたことによってこんな摩訶不思議なジャンルのダンスミュージックを作り出すことができたのだろう。前半はコンテンポラリーなサイケで始まり、Moon Talkでいきなりポップな一面を出し、そして世界中を旅するかのようにジャズ、アフリカ音楽などを彼女なりの実験的サンプリングを多用し未知なるグルーヴを生み出している。

聴き始め当初は見逃していた部分が時を経つにつれ聞けば高揚していきトリップしていく、そういうアルバムなのかもしれない。読書中に聞くのもよし眠りにつく時に聞くのもよし。今年最も重要な実験音楽。











#3
DAMN.
Kendrick Lamar
Interscope (US)


3位です。
もはやアメリカのみならず今や世界で最も注目を集めている人の1人ではないだろうか。ラップから伝わってくる超破壊的な感情はどれをとっても素晴らしく、怒りや悲しみを持ってラップでそれらは伝えられる。ラップの歌詞は難しいところが多いが彼の場合もそうで、さらに特徴的な鼻にかかった歌い方で、これはもはや英語じゃない言語でラップをやっているかのようだ。前作"To Pimp A Butterfly"は全く響かなかった僕だが、今回は正統派な方向性で聴きやすく、力強いラップがどの曲にも配備されているところは飽きがこない。
自分をぶち壊したい時、どうしようもなく悲しかった時、はたまた急に大勢の前で結婚発表をしてしまった時、"DAMN."は君たちを回復する術を知っている。。








#2
Masseduction
St.Vincent
Loma Vista (US)



個人的に非常に重要なアルバムとなったセイントヴィンセントの新作。この夏、幸運がかさなりアニーことSt.Vincentに会えた体験とともにこのアルバムの重要性に気づくこととなった。彼女の表情は凛としていてセイントヴィンセントを常に演じているように思えた。

彼女の言葉の一つ一つは今も忘れることはできない。

もちろんステージも群を抜いて魅力的だった。アルバムの内容は前作に比べグルーブ感が上がりよりエレクトリックな作品となっている。ステージからバンドを排除したのも彼女は1人であるという表現を圧倒的に完成させている。そしてラテックスファッションで統一していることも個人的に◎。

存在感、もはや彼女にはギターだけが必要だった。

圧巻のボンデージアルバムここにあり。














#1
New Energy
Four Tet
Text Records (UK)


ついにFour Tetが年間アルバムで1位に選べる時が来た。
ファンなら彼の作品だと一聴すればすぐわかるだろう、それほど"Four Tet"らしい作品なのだ。前作"Morning/Evening"はインド人のサンプリングがとても美しく幾度となく癒された。それがとても良かっただけに期待が膨らんでいて、今作公開時からはフォーテットを集中ヘビーローテーションで聞いた。民族的楽器が印象的な"Two Thousand and Seventeen"で本編の幕が開き、"Lush"でこれまたユニークなサウンドでテンポが上がっていく。中盤からは先立って公開されていた曲たちが登場し始めるのだが、最初に聞いていた印象とはまるで大きく違った印象となっており、おそらくシングル盤と変更はないようだがアルバムの中に収まるとこれまた曲の色合いをまじまじと確認することができる。フォーテットはシングルよりもフルアルバムの方が一際曲ごとに魔法がかかりうまみを増す。このアルバムによって今年のランキングの選出を難解にさせるぐらい個人的にはある意味難解なアルバムだった。だが、今は自信をもって今年のベストアルバムと確信を持っている。

また来年も素晴らしい音楽に出会えることを今から楽しみである。




1. New Energy/Four Tet
2. Masseduction/St.Vinsent
3. DAMN./Kendrick Lamar
4. Dust/Laurel Halo
5. Earl Grey/Girl Ray
6. Sleep Well Beast/The National
7. Reputation/Taylor Swift
8. Love What Survives/Mount Kimbie
9. Humanz/Gorillaz
10. Dirty Projectors/Dirty Projectors
11. Pure Comedy/Father John Misty
12. Merodrama/Lorde
13. 1992/Princess Nokia
14. Mnestic Presure/Lee Gamble
15. Pleasure/Feist
16. Utopia/Bjork
17. The Ooz/King Krule
18. B-Sides And Rarities/Beach House
19. Crack-Up/Fleet Foxes
20. Off the Rader/Noga Erez
21. 3D-The Catalogue/Kraftwerk
22. Kelly Lee Owens/Kelly Lee Owens