13年くらい毎年いろいろありましたと言っておりますが、今年はその中でも想像もつかない激動な年になりました。
様々な日常の”ふつう”が乱れ、これほどまでに構築された現代社会が目にも見えないものによって崩れる様はまるでパニック映画のよう。
まだまだ続くであろうこの不安とどう向き合っていくか日々考えさせられている。
幸いそんな中でも音楽は鳴り止まなかった。
いや、まだ止まっていないと言ったほうがいいかもしれない。
これからどのように音楽は変わっていくのか、僕の選んだ今年のアルバムはこの状況に影響を受けた形となっているだろう。
30 冥丁 - 古風
サンプリングを多用してつくる実験的な音楽は海外からも注目をされている冥丁(meitei)
古風と題されたように日本古来の音楽や過去の音源などを維ぎ合わせている。
僕は個人的にThe Caretakerの日本版ともいえるように古いトラックのホワイトノイズやレコード特有の暖かみと繰り返されるサンプリングが美しい。
サンプリングの上にリズムをつけることにより時代を超えた融合が生まれ、未知の感覚を味わうのもひとつの楽しみだ。
29 KELLY LEE OWENS - Inner Songs
前作セルフタイトルのデビュー作から3年、Kelly Lee Owensのセカンドアルバムはより深みを増した。デビュー作ではダンストラックを中心とした作風でその年のランキングでは22位にしたのだ。それがKLO本人からインスタでいいねをもらって”そんなことならもっと上位にしてあげればよかったと思ったのが懐かしい話だが、今作はいきなりRadioheadのArpeggiのカバーから幕を開けるという出だしにさらに興奮した。
その後のシングル曲”On””Melt!”Night”もエッジの効いたキックとは裏腹に優しいKellyの歌声が良いギャップとなっている。
コロナの影響で発売が遅れたこともありながら、2021年はこのアルバムを提げてさらに活躍の場を広げていくことを期待いしたい。
このアルバムはFour Tetが読むことのできない絵文字や文字で作った名前でリリースしていたものと、2020年後半にYouTubeで何日もストリーミング公開していた音源の一部だという事がわかる。
(同時リリースされた1997年あたりに録音されたという”871”もFour Tetを知る上では重要なdemo集である)
かつて謎の名義でリリースされていたものは最近のFour Tetの作風よりはアシッドで前期Four Tetのアンビエントハウスに近いものがある。
Four Tetのリリースラッシュは自主レーベルということもあり続々と世に放たれるのでそのあたりも注目していきたい。
27 MELENAS - Dias Raros
スペインのガールズバンドMelenasのアルバム。4人組の女子ガレージバンドであるが音に埋もれそうな浮遊感漂うボーカルはどことなく初期ステレオラブを彷彿とさせる。
曲自体も90年代グランジそのままなところもまた懐かしい感じがする。
スペインは女性ミュージシャンが多いことに気づいた。
26 LAUREL HALO - Possessed
ローレルヘイローの実験的コンセプトアルバム”Possessed”2018年にMetahaven & Rob Schroderが制作した映画のサントラなのだが、申し訳ないです僕はまだ見れていません。
サントラという位置づけなので前作、前前作の”Raw Silk Unut Wood””Dust”とは一線を画しローレルヘイローの最もダークであろう部分がフィーチャーされているようにも捉えられる。
インタビューなどがないためあまり濃い内容が書けないのが残念だが昨日10月に公開されたSemibreve Festival 2020の様子を収めたyoutube動画はとても素晴らしいパフォーマンス動画になっているのでリンクを貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Swe_lXRZQXM
2年ぶりのアルバム、4ADに移籍後3作品目となった”Heavy Light”
先行シングル”4 American Dollars”は彼女が4AD所属になってから開花しはじめたキャッチーなソウル調、サンバっぽさがあってずしずしと響くバスドラと合わさって体が勝手にリズムを刻む。
初期のファンを喜ばせる”State House(It’s a Man’s World” (U.S.Girls on KRAAK収録曲) や”Red for Radio”(Go Grey収録曲),そして2曲目の”overtime”は2013年にリリースされたEP:Free Advice Column から。
それだけにそれ以外では正直目立ったところがというのが僕個人の意見だ。
U.S.Girlsのライブを偶然2009年の旅行中に見た衝撃から10年ちょっと経って(何度もこの話をしてすみません)
KRAAKそして4ADに移籍しリリースごとに多様化する様は見ていて感動する。
しかし、やや今回はU.S.Girls紹介的なアルバムの要素が強い印象であると思う。1曲、数曲ごとに一息おくような転換曲も過去の作品のモノクロなノイズミュージック時代から変わらないところでもある。
これほどまでに吸い込まれるライブがかつてあったのか。
青葉市子の草月ホールで行われたライブアルバムが24位。
ギター一本の1時間半のショーなのだが全く飽きのこないライブとなっている。
これはコロナが開けたら必ず見に行こうと思う。
23 ANA ROXANNE - Because of Flower
前作2019年にリリースした”~~~”から早くも新作が届いた。というのも前作はこの作品の姉妹作でありこのアルバムが完成形というのだから驚きだ。しかも制作日数は5年をも費やしたという。
極上の何たらみたいな言い方はとても安易で使いたくないが、このアルバム本当に極上のアンビエントです。
22 THE STROKES - The New Abnormal
ストロークスが帰ってきた!それだけでも興奮する。
2000年代デビューからあっという間にビッグバンドになった彼らもここ10年はソロ活動やバンドとしては大人しめの印象があった。というのも10年代は2枚しかリリースしてなかったからだ。
過去のような期待とかはあまりなかったが、去るアメリカ民主党のサンダース氏の大会で新曲を演奏した様子を見た時はあの2000年代時の興奮が蘇ったの言うまでもない。
アルバムとしてはかなり良い出来になっているし、音作りなんかも今までとは明らかに細部までお色直しがされているように思える。アルバムを通しての物語性もすばらしい。
80年代ロックを連想させるような#3~#5,シンセのイントロが美しい”At The Door”
そしてバスキアのアートカバーに70年代映画風ポスターのシングルジャケット。センスの良さが目立つ。
“Lonerism”そして”Currents”といった最近のTame Impalaの流れを踏襲し、それをさらに掘り下げた今作”The Slow Rush”はデビュー作を含めた4部作といってもいいような気がする。
しかしながら、作品を追うごとに個人的な期待値は高いままなのでどことなく全体を通して寂しい内容に留まっているようだ。シングル曲”Borderline”はヘッドライナーバンドとなった彼らが堂々たる装いで出すには全く予想外な相変わらずのサウンドということに評価したいと思う。
少し酷評となってしまったが、彼らのライブはたっぷり楽しめる内容である音は間違い無いので、もし今年フジロックでヘッドライナーとなるならばきっと皆を喜ばせることだろう。
20 POLO & PAN - Feel Good -EP
Polo & Pan-フランス、パリの人気DJユニットで2017年リリースの”Carvelle”は当時僕は全く知らなかったが後になって聞き去年よりファンになっているほど心地のよいアルバムだ。
そんな彼らが、今年のロックダウン中にYoutubeでリリースしたMixが心酔するほど良くてしばらくランニング中のBGMになっていたほどだ。
そこにはこのEPを発表を予感させる新曲がありその中の”attrape-rêves”は彼ら屈指の曲であるがごとく、ゆったりとして重厚なビートにトロピカルなメロディ、そして魅惑的なボーカル、哀愁こもるトランペットorサックス。
こんなにも魅了される曲はなかなか出てこないほどのものだと思う。
フルアルバムを今から期待しているところだ。
僕の最も尊敬する映画監督の一人、ミランダジュライ(Miranda July)の新作”Kajillionaire”のサウンドトラックが20位。
ミランダジュライを好きになったきっかけは偶然、”アイスランド” という話題が映画の中で会話されているトレイラーを見てからはじまる。
”君とボクの虹色の世界 (Me and You and Everyone We Know)”2005年の中にそのシーンは含まれるのだが、国のアイスランドとは関係がない事、そしてミランダジュライがとてつもなく才能豊かな人だった事がわかる。短編や長編エッセイや謎めいたインスタグラムの投稿。
演技という表現のアートの中に生きる彼女を見ていつも胸がざわめく感じがする。
ふつうの感動とはまた違う。
そのミランダ・ジュライ氏の新作がなんと本編よりサントラから聞くという通常の逆パターンとなった。
まず言いたいのがAngel Olsenが歌う”Mr.Lonley”の素晴らしさだろう。Angel Olsenの低いボーカルに感嘆する。
いったいこの映画はどんなものなのか想像をしてもできない。もはやこのサントラを聞きに聞くために映画を見にくのか、いやそんなことはないミランダジュライの新作ですから。早く日本公開がされる日を祈って。。
2020年は“Cenizas”の続編となる今作と2枚のリリースをしたNicolas Jaar. そしてAgainst All Logicをあわせれば3枚のリリースと大盤振る舞いの年となった。
この作品は弦楽器や打楽器といった生音が主に収録されていて、アンビエントよりはかなり実験的に”Cenizas”と比べるとすこし角の立つサウンドに注目したい。
17 ANGEL OLSEN - Whole New Mess
2019年リリースの”All Mirrors”の前に録音されたというギターのみで録音されたアルバムで、曲のほとんどがALL Mirrorsに収録されているものだ。
全くいっていいほどAll Mirrorsは僕に響かなかったものの、このWhole New Messは真逆だ。どの曲も生まれたての生き物のように新鮮で聞いているだけでゾクゾクする。
それはこのアコースティックスタイルからくるものなのだろうか、終始Angelのボーカルは歪み時には音が割れるほどだ。50年代の流しのミュージシャンのようなそんなカッコ良さがあるアルバムだ。傑作。
2016年の”Oh No”から3年ぶりのフルアルバム。当初はミニマルでライトなアルバムかと思って聴いていたが、聞くたびに見事に内容の濃い作品となっていくのがわかる。
シティポップのリバイバルブームからなるこのアルバムは所々に日本の70〜80年代ポップスのスパイスが見られ本人もそれを目指している旨の発言をしている。
今年はロックダウンもあったことで彼女のYouTubeをみれば様々なミックスが聴ける。それらは今年ランニングなどで大変お世話になったもののひとつである。
前作のデビュー作”LOMA”から2年、民族音楽的なグルーヴと哀愁さを持ち合わせたボーカルがさらに磨きがかかって帰ってきた。
よりディープになったサウンドはこの先のLOMAの進化を予感させるものとなっていることを期待したい。とてもいいが、何度も聞く事がむずかしいアルバムでもある。
お気に入りはスティーブ・ライヒを連想させる”Breaking Waves Like a Stone”
各メディアではあまり注目されていないのがなぜだかきになる。
HAIMが僕のランキングに登場するのは初めてのことです。
今まで見過ごしてきた理由としては、キャッチーすぎて全て聞くことが億劫になってしまうとか、そんな下らない理由だったのだが。今回ひとたび蓋を開けてみたらびっくりHAIMワールドにどっぷりと浸かってしまった。
アップビートの曲の数々に”I Know Alone”のような少し暗さを持った曲もビートが軽快でダンサブルなエディットに仕上げている。個人的にお気に入りは”Don’t wanna”乾いた打ち込みドラムにアップテンポのキラーチューンだ。
このバンドもおそらく来日公演なんかも予定されていたのではないかと思う、2021年はいずれそのような機会が巡ってくることを切に祈る。。
先ほど18位にランクインした”Telas”の姉妹作の前半にリリースされた”Cenizas”だ。いつものNicolas Jaar特有のダークで浮遊するようなボーカルが特徴だが、今作は電子音より管楽器などのリアルの楽器が多く使われている。
”Siren”などと比べるとより実験的な要素やニューエイジに近いものがあるが、ビートの効いたダンスチューンはもっぱらAgainst All Logicでやることにしたのだろうか。
なかでも”Mud”や”Faith Made of Silk”は秀逸なビート使いで長いダークゾーンのロングランから解放されるようなきぶんだ。
カナダはモントリオールのシンガーソングライター。去年はMen I Trustが1位にしたということもあり、カナダのインディーズシーンが盛り上がっているし、個人的に僕のテイストにマッチしている事がうかがえられる。
実はこのHelenaさんもMen I Trustでゲストボーカルをしていたこともあるという近い存在であった事が驚きだ。
アルバムはというと、感情的でアグレッシブなドラムに叙情的ボーカルと歌詞は素晴らしいの一言で”Someone New””Fruit Pit””Pale”はこれだけでも彼女の音楽性の魅力にすぐに気づけるものだと思うし、これがデビューアルバムだと思うとこれからどんなものを作っていくのか大変興味深い。
知らずにこのイントロの優しいピアノの旋律を聴いたら瞬間、このアルバムがまさかテイラースウィフトだとは思わないだろう。これはポップスターになったテイラーの飽くなき挑戦のひとつだ。
僕がテイラーを聞くようになったのは二つ前の3年前、2017年リリースの”Reuptation”からだ。(このランキングでは7位)あの時はこういう人も際どいことやるんだなと思って個人的にはかなり興奮したのを覚えているし、ライブを見に行こうかとも思った。
つぎにリリースされた”Lover”は残念ながら大衆的ポップ路線に回帰、おそらくReputation の際どいところがやりすぎたと感じたのであろうか。
それから2年、2020年のロックダウンの最中に彼女は大胆ともいえる路線変更をやってのけた。まずはThe Nationalのアーロンデスナーをプロデューサーとして迎えたこと。正直言ってこんなコラボレーションが起きたことが信じられなかった。僕にとっては遠い親戚のおじさんがテイラースウィフトのアルバムに参加するようなものだった。
まさか、と信じられないような生音の数々にやはりというべきかアーロンを起用したことによる未だに感じたことのないような安堵感と緊張感が降り混ざっている。このアルバムは今年一番の事件だった。
10 YELLE - L’Ere du Verseau
2007年Pop Up(12位)で当時のフレンチテクノポップのアイコンとなってはや13年。
当時の感覚は今でも忘れられない、キャッチーなメロディとフランス語の歌詞のバイブレーションが爽快だった。2011年 Safari Disco Club (19位)になると、ティーンの音楽から成長を遂げコンセプトが明確になった。
個人的にも将来性に期待するも2014(46位)では個人的にはセールスも目指す方向性も今までのYELLEのエネルギーが散漫しているように見えた。しばらくYELLEは休みを取っていたわけだが、実はその間自主レーベルを始めたりパートナーであるプロデューサーのJean-François (GrandMarnier) Perrierと共に制作活動をたやさなかったという、子供でナイーブだったという前作に比べたら今作は遥かに暗いが聞き応えとクオリティは明らかに成長を遂げた。
YELLE はロックダウンという苦境を乗り越えた時ライブでの恩返しを約束すると共に、レコードを購入した時には僕の名前入りのサインまで書いてくれるサービス精神も身近に感じられるアーティストだ。
9 GRIMES - Miss Anthropocene
宅録少女として”Visions”(2012年:1位)が流行ってから早8年となった。Grimesの活躍は音楽だけでなくテスラ社のCEOであるイーロンマスク氏との交際など音楽以外でも話題を集める期間となった。
そんな中リリースされたこのアルバムは前作”Art Angels”をさらに想像力が異次元にあり、音楽性はもはや遠い未来のものであるかのような現代的とはいえない内容である。
強いていうなら前作の何でもかんでもアイデアをぶちまけるというスタイルから、より計画的により暗い印象を与える。この成長ぶりは当然次作も気になるところ。
はかりしれない爆発力はいつまでも続けて欲しい。
どこまで歪ませれば気が済むのか、どこまでエッジをきかせれば気が済むのか、もう踊らせたいアルバムでも何でもない。攻撃的なエレクトロの限界に挑むNicolas Jaarの別プロジェクトAgainst All Logicの新作は前作”2012-2017”を遥かに上回るサンプリングの圧縮やカッティングを多用し、もはやダンスするための音楽ではないが、ギリギリのところで落ち着いているようにも思えるところがNicolas Jaarの才能が際立つところでもある。
彼が以前Boiler Roomのmixなどでとてつもない才能を発揮しているDJ SETの動画があるが、その頃に比べるとより一層重厚になり秀逸で完成度が高いストーリー性のある曲の数々だ。
いったいこの男、いくつもの顔を持つのだろう。計り知れない。
僕のアイスランド への愛情はもはや家族や恋人のような存在になっているわけで、ここ最近はアイスランドの自然をもう一度再確認してどっぷりと浸りたいとそう感じるようになった。
音楽に関してはいつも贔屓ができない性格なところもあるので、正直に言うとここ最近流行っているバンドはあまりお気に入りにならないのが現状だった。
しかし、この”some kind of peace”は違う。
去年Band Camp限定でリリースしたEP”Disembodied Improvisations Vol.1”(5位 )はLPでないにもかかわらず圧倒的な実験的かアンビエント作品であった。
そして今作は久々のフルアルバムということもあり、期待もしていたが先のコロナ禍の影響によりリリースが大きくずれてしまった。
待ちに待ったアルバムを聞いてみるとそれはまるで宝箱を開けてしまった時のような感覚におそわれた。ほとんど一発撮りのようなジャム形式で民族というよりも宗教的な趣が中毒性を呼び起こさせるグルーブは終始鳴り止まず、最後の”Sun”でそれは頂点に達し、すべての力が集まった瞬間、このアルバムは終結を迎える。
まるで、このコロナ禍の中を暗示するかのような、現実と非現実の世界を繋ぐおまじないのようだ。
もう過去にこの人がDirty Projectorsのメンバーであったことはもういう必要もないだろう。
Big ThiefのボーカルであるAdrianneのソロ作品”songs”と同時リリースとなっている。
この作品はコロナウイルスによる状況の変化によって生み出されたアルバムの一枚である。
Big Thiefは2019年リリースの”U.F.O.F.”を引っ提げたツアーが全てキャンセルになりAdrianneは山中にある家に住み始めた事がきっかけだという。
そこから”songs””instrumentals”の二枚が完成したのだった。このアルバムはおそらくほぼ一発撮りのような作風で、音源にも様々な環境音が入っておりライブ感がある仕上がりになっている。
しかし、よく耳を澄ませば焚き火の音や雨音がフェードアウトしたりフェードインしたり、鳥のさえずりは時折はっきりと聞こえることから、実に巧みな編集が行われている事がうかかがえる。基本はAdrianneのアコギや鈴やベルが中心のインストで前半と後半に分けられている。
後半はさらに野外の環境が増えている印象で、僕の趣味的な聞き方はハイキングをしながらこのアルバムを聴き、実際の環境音とこのアルバムの環境音そしてアコギと管楽器の音色全て融合する時、とても温かみのある至福感に包まれる。
より自身のエレクトロを目指したという“The Triad”から4年。とんでもない傑作。
今回は木がテーマだ。本人曰く”私自身木になりたかったし、ミュージシャンのグループも木になりたかった”というコメントを残す通り木琴や、お手製の木製打楽器での演奏が多くなっている。
非常にゆったりとした時間が流れ、物語は社会の喧騒を離れて心地よい時間が流れていく。次第に打楽器がなりはじめそれがビートとなってリズムを刻んでいく。
森にいる僕はそれが外で鳴っている音なのか、耳元のイヤホンからなのか区別がつかない。いや、そんなのはどうでもいい。ただただ音源の一音一音が気持ちが良くて。
自然の音響と音源が合わさってスペクタルを生み出し、心は次第に興奮していく。
山はそれを受け入れいるかのように風を起こしはじめた。
次第に日が暮れ暗闇が恐怖という感情を生み出す頃、山は眠りにつかのように無言になる。
自然に触れることによって、より音楽と深く触れ合えるようになったかもしれない。
Pantha du Princeはそのすべてを音で表現している。
“forklore”は本当に衝撃的なアルバムだった。
The NationalとTaylor Swiftというポップアイコンとの共演の実現。信じられないバイブレーションが産まれて、興奮は計り知れない程だ。
そんな中産み出された姉妹作”willow”は”forklore”をもうすでに過去のものだったかのような存在に押しやるほどの安定感と存在感を放つ傑作だということをいわなくてはならない作品だ。ナショナルのアーロンは冷静さを保ちながらよりナショナルで培ってきた作風をテイラーに与え、それをテイラーが見事なまでに合体技をくりだしてきたのだから。全体的にテイラーの歌声はよりマイルドさを増しているようで幕開けの”willow”ではテイラーの裏で鳴っているピアノがとても効果的で”’tis the damn season”ではまさにナショナルの曲らしくギターのナンバーであるが。こんな曲がテイラースウィフトのアルバムにあるなんて。。”coney island”ではついにマット氏とテイラーのデュエットという信じられないような出来事が起きて、”long story short”ではナショナルではおなじみのドラムラインが永遠にテイラーのボーカルに乗っているのだ。
ボーカルのことを言えば、今までよりは断然キツさがなく”forklore”よりはるかに自然体なエディットであることがわかる。これはコラボ作品をこえて、テイラースウィフトがナショナルのメンバーになったかのようなアルバムといってもいいのではないか。
“Long Story Short”が好きになったあなた。ナショナルというバンドで酔狂するほどそのドラムラインを聞くことができますよ。
さて、今はナショナルと一緒になったテイラーさんですが、これは1つの通過点となるのか、この先は誰にもわからない。
政治的にも発言の自由を選び、ナショナルとニューアルバムを作り、こんなポップスターは今まで見た事がない。
この先テイラースウィフトはどこへ向かっていくのか、期待したい。
今年一番のサプライズはTaylor Swiftですが、この青葉市子は僕にとっては一番の衝撃、感激だ。
恥ずかしながらフジロックにも何度も出ているというのにこの青葉市子のことを僕はあまりよく知らなかった。やはりというか自分の知りたいものとのそれに出会える数というのは長年いろんな音楽を聴いていてもなかなか辿り着かないもの。
青葉市子は2020年という年と僕の感情の波が偶然に奇跡的に出会わせたような感覚であるかのようです。
内容の話をしようと思う。はっきり言って今まで出た日本人のアルバムの中で最高の音楽作品である。というと大袈裟かもしれないが、そんなことはない。この得体の知れない空気感、透き通るようなボーカル、それでいて程よく入りやすいメロディ。
抜かりない音の数々、透き通るようなどこか見たことのない次元の世界へと誘う青葉市子のボーカル。そこには日本のバンドにあるような、いわゆる”理想的なカッコ良さは”存在しない。
いやそんなものははっきり言って荷物にしかならないのでやめたほうがいい。このどこの方向に行くのかわからない未来を想像しながら青葉さんの音楽性の将来に期待したいと思う。
こんなに素晴らしいアルバムに出会えた僕は本当に幸せものだと思う。それほどうれしかった。
2020年ベストアルバム。
鳥のさえずりと木々の擦れ合う音、水の流れる音。誰かの話し声に耳をすませば目を瞑るだけで、さまざまな風景が広がっていく。
2017年”New Energy”に続いて2作連続の年間ベストアルバムに選びました。
2020年は自然と触れ合い始めた年となった、それもコロナウイルスの蔓延により仕事が少なくなって空いた時間に何度も箱根や高尾をはじめとした近郊の山へとハイキングに出かけた。
当時僕のメンタルレベルはかなり不安定な状態だったこともありその行動は人生における1つの休息を意味していた。
山に行くと自然の音とイヤホンから流れる音楽が友達だった。こんなにも心が落ちつかされることに感激し、何度も足を運び果てには大島や八丈島まで行った。
やがて仕事や社会は戻ったかに思えたが通常というものになり損ねた非なる日常がその後は張り付いている状態が今でも続いている。
未来は何が待ち受けているのであろうか、人間とういう科学と文化を狭い地球で最大限まで膨張させた仇が今襲いかかってきているのであろうか。
ここまで地球を感じた年はなかった。そしてどんなときもこの”Sixteen Ocean”はぼくの2020年のサウンドトラックとして鳴り響いてくれていた。
何百回も聞いているのに毎回初めて聞くようなリアルな音。これを待ち望んでいたアルバムというべきなのではないのか。
そう、どんな時でもどんな場所でもBGMになる音楽。それこそが傑作なのである。
このコロナの状況から様々なアーティストが普段と違うものを経験して、さらに眠っていた才能やアイディアを吐き出す時。聞き手はそれの準備をしなくてはならないほどとてつもない力のこもった音楽がこれから出てくるのではないかと想像する。
#1. FOUR TET - Sixteen Oceans
#2. 青葉 市子 - アデンの風
#3. Taylor Swift - willow
#4. PANTHA DU PRINCE - Conference of Trees
#5. ADRIANNE LENKER - instrumentals
#6. DEARADOORIAN - Find the Sun
#7. Ólafur Arnalds - some kind of peace
#8. AGAINST ALL LOGIC - 2017-2019
#9. GRIMES - Miss Anthropocene
#10. YELLE - L’Ere du Verseau
#11. Taylor Swift - forklore
#12. HELENA DELAND - Someone New
#13. NICOLAS JAAR - Cenizas
#14. HAIM - Women In Music Pt.III
#15. LOMA - Don’t Shy Away
#16. JESSY LANZA - All The Time
#17. ANGEL OLSEN - Whole New Mess
#18. NICOLAS JAAR - Telas
#19. EMILE MOSSERI - Kajillionaire (Original Motion Picture Soundtrack)
#20. POLO & PAN - Feel Good /EP
#21. TAME IMPALA - The Slow Rush
#22. THE STROKES - The New Abnormal
#23. ANA ROXANNE - Because of Flower
#24. 青葉 市子 - Gift at Sogetsu Hall
#25. U.S. GIRLS - Heavy Light
#26. LAUREL HALO - Possessed
#27. MELENAS - Dias Roros
#28. FOUR TET - Parallel
#29. KELLY LEE OWENS - Inner Songs
#30 冥丁 - 古風
#31. MEDIA MEDIA MEDIA - Life in Kanji Murayama's Sustainable Dreams